緑オリーブ法律事務所ブログ

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 今回の衆議院総選挙についても、10月22日の投票日の翌日23日に、全289小選挙区について、一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)を全国一斉提訴しました。(朝日新聞DIGITAL・10月23日産経新聞デジタル・10月23日
 名古屋高裁管轄の愛知県の15選挙区、岐阜県の5選挙区、三重県の4選挙区についても提訴し、夕方のニュースにもなりました。(NHK名古屋・10月23日名古屋テレビ・10月23日


 記者会見で、今回の訴訟では、おそらく次の2点が大きな問題となるだろうとお話ししました。


1.平成28年改正法による新区割りのもとでの総選挙
 小選挙区は「0増6減」(比例代表も含む全体では「0増10減」)となり、6県(青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島)についての配分定数の見直しがされた。
 その結果、選挙公示日前日の10月9日時点で、
  ・議員1人あたりの有権者数が最小=鳥取県第1区、239,104人
  ・議員1人あたりの有権者数が最大=東京都第13区、474,326人
  ∴一票の格差=1:1.984、0.50票
となっていて、ひとつの目安とされている「2倍基準」をギリギリ満たしている。


2.最高裁平成29年9月27日大法廷判決(2016参議院通常選挙)の影響
 平成27年改正法により、鳥取・島根、徳島・高知の4県2選挙区の合区を含む「10増10減」を実施し、一票の格差が最大4.77倍から3.08倍に縮小していた。最高裁はこれを、「参議院の創設以来初の合区を行い、数十年間にもわたり、5倍前後で推移してきた格差が縮小した」と評価し、また、平成27年改正法の付則に「平成31年参院選に向けた抜本的な見直し」が明記され、さらなる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されたとして、「違憲の問題が生じるほどの著しい不平等状態とはいえない」と、合憲と結論づけた。
 努力と決意の姿勢が見られれば、較差があっても違憲ではない、という最高裁の判断が影響しないか。


 しかし、私たち弁護士グループとしては、それでも違憲と判断されるべきだと考えています。いまだ2倍近い最大較差がある=一人0.5票だからです。
 かつ、現在の較差是正は、過去3回の訴訟で最高裁から問題性を指摘され続けた「一人別枠方式」の影響下にあった区割りを基礎になされており、弥縫策にすぎず、一部選挙区の定数を削って無理矢理2倍以下にしてみたにすぎないからです。
 〝1倍〟=一人〝1票〟が実現され、誰にも等しく1票ずつが与えられ、投票価値の平等が達成されてはじめて、民意を正しく反映した国会が形成されます。私たちが求めているのは、そのような民意が正しく反映された国会による意思決定です。


 他方で、一人一票の実現は地方の声の切り捨てだ、との声も聞かれます。この点、国会議員は地元選挙区の代弁者でなく、「全国民の代表」(憲法43条1項)ですから、そもそもそのような批判は当たらないのですが、ただ、議員の実態として、「おらが町の代表者」の色合いが濃いのも事実です。
 また、一人一票を厳密に実現しようとすれば、市区町村域をほとんど無視して、選挙のたびに区割りをし直さざるを得なくなる、との批判もあります。「投票価値の平等」の重みを考えれば、それも仕方ないように思いますが、候補者と有権者のつながりを希薄にしてしまうようにも思います。
 個人的な意見をいわせていただくと、これらの問題点も含めて解決するには、小選挙区制をやめるほかないのではないでしょうか。保守から革新までさまざまな政党が存在し、なかなか2大政党制が定着しない日本には、小選挙区制はあわない、もっと大きなまとまりでの選挙制度を検討すべきです。


 安倍首相は、今回の選挙結果を受け、ますます憲法改定に前のめりのようですが、まずもってすべきは、一票の格差是正、一人一票の実現です。そして、日本の議会制民主主義によりふさわしい選挙制度の実現です。改憲の発議という国の根本にかかわる問題は、それをするにふさわしい国会で議論していただきたいです。
 今回の訴訟にも是非ご注目ください。(浜島将周)


 





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