緑オリーブ法律事務所ブログ

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 ジャーナリストとして20年以上前から、住基ネットをはじめ国民総背番号制や国民監視に警鐘を鳴らし続けていらした斎藤貴男さんと、弁護士登録以来、防犯カメラやGoogleストリート・ヴュー等によるプライヴァシー侵害の問題に取り組んでいらした武藤糾明さんをゲストに迎えての「監視社会」化を考えるシンポジウム。大勢のみなさんにご参加いただき、弁護士会館5階ホールは満員となりました。その模様はマスコミにも取り上げていただきました。(メ~テレ・2月4日


 斎藤さんからは、権力者は国民を監視したがる性癖を持つものであること、したがって、今回のマイナンバー制度という名の国民総背番号制は権力者の長年の悲願であること(「『マイ』ナンバーというが、私はそんな番号を欲しいなんて言ったことはない。『スティグマ』(=奴隷の刻印)ナンバーだ。」とおっしゃっていました。)、であるにもかかわらず、監視される側の日本国民からは大した反対の声が上がらないこと(「国民は奴隷になりたがっている」と言った役人もいたそうです。)、このマイナンバー制度の利用範囲は、官民に際限なく広がり、いずれ監視カメラ網とも連結し、国民ひとりひとりの日常すべてが把握される時代が来るかもしれないこと、が指摘されました。


 武藤さんからは、現在では街なかだけでなく過疎地にまで防犯カメラが設置されるようになり、駅等では監視カメラが死角なく稼働し、車載カメラが車外だけでなく車内にも向けられていること、それなのに、より一層の設置を求める声が上がっていること、現代の監視カメラの問題は、かつて議論された警察によるデモ隊等の撮影と肖像権という個人情報の収集時だけを捉えて議論していては不十分で、顔認証さらには声認証や行動認証の技術が飛躍的に向上し、どこかで一度取得されたデジタル・データを基に(運転免許更新時に撮影されている顔写真データも?)、個人の特定と追尾ができてしまうという、収集された後のことも考えなければならないこと、が指摘されました。



 濵嶌がコーディネータを務めた後半のパネルディスカッションでは、議論はさらに秘密保護法や共謀罪にまで広がりました。
 本来国民のものであるはずの国家の情報は隠され、それにアクセスしようとした市民や政府に盾突く(と目をつけられた)市民は処罰され、逆に市民の情報は政府にはガラス張りとなろうとしていること、であるにもかかわらず、お上のいうことに従順に従い、馴らされてしまう市民が多い、とくにSNS時代の若者には危機意識が少ないこと、マスコミの多くもすっかり牙を抜かれてしまっていること、が指摘されました。そして最後に、市民ひとりひとりが「監視社会」への問題意識を持ち続けることが大切だ、と呼び掛けられました。



 個人の尊厳が守られ、プライヴァシーが尊重された社会であることが、個人が自由に考え発言できる社会の基礎です。テロ問題に揺れるEUは、トランプ米国大統領や極右政党のように一部の個人の尊厳を否定し排除するのではなく、それでも最大限の自由を確保しようと真剣に議論しています。日本もそうあり続けてほしい、そのためにも、「監視社会」化の流れに抗い続けていかなければならない、そんなことを考えさせられたシンポジウムでした。(浜島将周)

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