2011年の大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故で避難した住民らが、国に損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、「津波対策が講じられていても事故が発生した可能性が相当ある」として、国の賠償責任は認められないとする統一判断を示しました。最高裁としての初判断で、同種訴訟への影響もあり、大きく報道されました。(NHK NEWS WEB・6月17日、同解説、福島民友新聞Net・6月18日、東京新聞Web・6月18日)
濵嶌は現在名古屋高裁で係属中の同種訴訟のうちの「だまっちゃおれん!原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜」の弁護団を務めています。
上記各報道で、最高裁の判断内容について、かなり踏み込んで報告されていますので、詳細な説明はそちらに譲ります。
判決全文はこちらでご覧いただけます。
最高裁のおおよその考え方は、東電等が主張する「ドライサイト論」(敷地に浸水させないことが絶対的な津波対策である)をもとに、「水密化」等(浸水しても大丈夫な対策をとる)の必要性・可能性を無視したものだといえます。原告側からすれば、すでに論破されているはずのドライサイト論に乗っかった判決です。
上記各報道で、専門家から「争点をそらした」判決だとか、「肩すかし」判決だとか指摘されているのは、この点にかかわります。
当時の知見ではドライサイト論しか考えられなかった。
→ 国が規制権限行使していても、浸水させない対策をとる=防潮堤を造ることにとどまった。
→ 長期評価に基づく津波を想定して防潮堤を造っても、本件の津波は想定外で、本件事故を引き起こす浸水を防げなかった。
→ 国が規制権限行使していても、本件事故は防げなかった。
→ 国が規制権限行使しなかったことが違法とはいえない。
福島訴訟(いわゆる生業訴訟)弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士が「結論を導くための判断の過程や姿勢全てが求めていた被害者の思い、事故の深刻さ、教訓を導く姿勢を欠いた判決だった。受け入れるわけにはいかず、司法の役割を果たさなかったと言わざるを得ない。」とコメントされていますが、そのとおりの判決で、原告らとしては受け入れがたい判断です。
馬奈木弁護士がFacebookで公開された長文コメントはこちらでご覧いただけます。
名古屋高裁には、なぜ国の責任が問題となっているのか、正面から向き合ってもらうべく、原告団・弁護団・支援者ともに、引き続き主張・立証に努めていきます。(浜島将周)
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