緑オリーブ法律事務所ブログ

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 司法試験の受験生時代に私があまり納得できないでいた最高裁判例にかかわる事件の報道がありましたので、一般の方にはほとんど関わりない事件ではありますが、ご参考までにご紹介します。


 地方議会が議員に出席停止処分を課した場合、議員はその処分の適否を裁判で争えるのか?
 宮城県岩沼市議会が2016年に某市議に課した23日間の出席処分について、当該元市議がその取消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷が「対象になる」との判断を示しました。15人の裁判官全員一致の結論のようです。(毎日新聞web・11月25日日経新聞web・11月25日等)


 この論点について、最高裁は、1960年の大法廷判決で、「出席停止は内部規律の問題として裁判で扱うことが適当ではない」として、「議員の身分を失う除名処分以外の処分は裁判の対象から外すべきだ」としていました。団体内部の規律問題については、当該団体の自治や自律権を尊重し、司法審査が及ばない(及ぼすべきではない)とする、講学上<部分社会の法理>と呼ばれる考え方で、地方議会のほか大学、政党、労働組合、宗教団体等について、同法理の適用が問題とされてきました。
 今回の最高裁の判断は、この60年前の判例を変更し、出席停止処分も「常に裁判の対象となる」と判断したものです。


 今回の最高裁も、地方議会による議員に対する懲罰は、議会の秩序保持や円滑な運営を目的としているとして、こうした地方議会の自律的な権能は尊重されるべきだと指摘しました。
 その一方で、住民自治を担う地方議員は、住民の代表として自治体の意思決定に関わる責務を負っているとし、出席停止が科されると、地方議員としての中核的な活動ができなくなるとして、懲罰の判断には地方議会に一定の裁量があるとしても、裁判所はその適否を常に判断できると結論づけました。


 日本全国の自治体数は現在、都道府県が47、市区町村が1724。東京の23特別区も含めれば、地方議会の数は約1800にもなります。
 自治体によっては議会多数派による少数派に対する乱用的な懲罰がみられるとの指摘もあり、そのために正常に自治が機能していないことがあるともいわれています。
 原告の元市議側は、多数派による乱用的な不当懲罰は多いとして、「改革の志を持って新人議員になっても、いじめのような扱いを受け、是正されないとしたら議会は活力を失う」と訴えたそうです。
 日経新聞には、神橋一彦 立教大学教授(行政法)による、「定数の少ない議会では、出席停止が議決を左右することもあり得る。聖域ではないと示し、住民代表機関としての地方議会の在り方を考え直す一石を投じた」とのコメントが掲載されていました。
 また、今回の最高裁判決においても、行政法学者である宇賀克也 裁判官が、「議会の自律性の全面否定にはならず、乱用的な懲罰の抑止が期待できる」との補足意見を付けています。
 私個人としても、このような考え方の方が胸に落ちます。


 本件について、一審仙台地裁は2018年3月、従来の判例に従い訴えを却下していました。同年8月の二審仙台高裁判決は、「議員報酬の減額につながる場合は司法審査の対象になる」と一審判決を取り消し、差し戻しました。最高裁判決を受け、今後再び仙台地裁で審理されることになります。(浜島将周)

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