緑オリーブ法律事務所ブログ

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 名古屋高裁に係属中だった原爆症認定訴訟(ノーモア・ヒバクシャ訴訟)について、3月7日、判決が言い渡されました。(中日新聞Web・3月8日読売新聞ONLINE・3月8日CBC NEWS・3月7日NHK名古屋・3月7日等)
 濵嶌は弁護団に加わっています。


 原爆症認定には、
① 疾病が被爆に起因するか(放射線起因性)
② 申請時に治療が必要な状態だったか(要医療性)
の2つの要件が必要だとされています。
 この点、1年半ほど前にこのブログでご報告したとおり、第一審・名古屋地裁は、4人の原告全員について、①放射線起因性を認めたものの、うち2人について、症状は安定しており治療はされておらず、②要医療性は認められない、と判示し、2人について請求認容したものの、2人について請求棄却しました。(2016年9月14日「原爆症認定訴訟、名古屋地裁が2人の請求を認める」


 これに対し、今回の名古屋高裁は、②要医療性について、「被爆者援護法の「医療」は、積極的な治療を伴うか否かを問うべきではなく、被爆者が経過観察のために通院している場合であっても、認定に係る負傷または疾病が「現に医療を要する状態にある」と認めるのが相当である」として、地裁判決を是正する判断を行い、第一審敗訴の2人についても要医療性を認めました。
 これは、被爆者を救済するという被爆者援護法の趣旨に合致した解釈であり、要医療性を狭くとらえている国の運用を厳しく批判したものです。


 今回の名古屋高裁判決に対して、厚生労働省は上告・上告受理申立をすることなく、重い病気で苦しんでいる原告らを早期に救済し、原爆被害に対する償いをするよう強く求めます。(浜島将周)


 


<3.24.追記>
 3月22日、国は、お二人のうちの姉については上告を断念したものの、妹については上告受理申立をしました。(中日新聞Web・3月23日メ~テレ・3月22日
 何度裁判所から原爆症認定行政の問題点を指摘されても、訴訟を長引かせ、過ちを受け入れない国に対し、強く抗議します。
 弁護団が抗議声明を発表しましたので、以下、貼り付けます。(浜島将周)




国による上告受理申立に対して強く抗議する


2018年3月22日

原爆症認定愛知弁護団
愛知県原水爆被災者の会
                       あいち被爆者支援ネットワーク


 本日,国は,ノーモア・ヒバクシャ訴訟名古屋高裁判決(2018年3月7日言渡)につき,山田初江さんについては上告受理申立を断念したが,高井ツタヱさんについては最高裁判所に対し上告受理を申し立てた。


 名古屋高裁判決は,被爆者援護法における原爆症認定の要件の一つである「要医療性」について,(同法10条の)「『医療』は,積極的な治療を伴うか否かを問うべきではなく,被爆者が経過観察のために通院している場合であっても,認定に係る負傷又は疾病が『現に医療を要する状態にある』と認めるのが相当である」と判示し,一審判決が「被爆者が積極的な行為を伴わない定期検査等の経過観察が必要な状態にあるような場合には,同法上,原則として健康管理としての検査等によって対応すべきであって,当該疾病等につき再発や悪化の可能性が高い等の特段の事情がない限り,上記定期検査等は『医療』には当たらない」と狭く解釈した判断を覆して,要医療性を認めた極めて妥当なものであった。


 国の上告受理の申立は,高齢化した被爆者の救済を先延ばしし,更なる苦しみを与えるものである。これは,2009年8月6日に麻生首相(当時)と日本被団協代表が,集団訴訟の終結に向けて,被爆者が「今後,訴訟の場で争う必要のないよう」解決を図ることを確認したことにも反するものであり,高井さんに対する上告受理申立に対し,私たちはこれに強く抗議する。


 名古屋高裁判決は,被爆者を救済しようという被爆者援護法の趣旨に合致したものであり,最高裁判所が速やかに上告受理の申立を棄却することを求める。

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