警察による捜査対象者の車両へのGPSの無断取り付けについて、何度かこのブログでも取り上げてきましたが(2016.2.12.「シンポジウム『安心・安全?監視社会~今も、あなたは視られている!~』のご報告」、2016.7.1.「令状なしのGPS捜査に『違法』判断」、最高裁判所がこの問題についての初判断を示しました。
結論は「令状が必要な『強制捜査』にあたり、捜査は違法だ」という判断です。(朝日新聞DIGITAL・3月15日、毎日新聞WEB版・3月15日など)
最高裁の判断のポイントは、以下のとおりです。(判決全文はこちら)
1.GPS捜査は、個人の行動を継続的、網羅的に把握するもので、公権力が合理的に推認される個人の意思に反して私的領域へ侵入するものだから、プライバシーを侵害する捜査方法だ。
2.GPS捜査による私的領域への侵入は、憲法35条が保障する「令状なしに家宅捜索や所持品の押収をされない権利」を侵害するに等しいから、GPS捜査は、令状が必要な強制捜査だ。
3.車両や罪名を特定しただけでは、容疑と関係ない行き過ぎた行動把握を抑制できない。他方、事前の令状呈示に代わる公正担保の仕組みも必要で、GPS捜査の特質に合わせた立法が望ましい。
当然といえば当然の判断なのですが、正直なところ、最高裁がここまで踏み込んで(しかも大法廷で全員一致で)判断したことに驚きました。
現在係争中の事件でGPS捜査による証拠が問題となっているものもあるでしょうし、捜査中の事件で令状のないGPS捜査が現に行われているものも少なからずあるでしょう。
また、この判決の射程距離は、GPS捜査に限られず、新しい捜査方法でプライバシーの侵害、私的領域への侵襲を伴うものにまで及びうるものです。
捜査機関がこれらを安易に任意捜査としてきたことに反省を迫るもので、実務への影響は大きいと思われます。(浜島将周)