緑オリーブ法律事務所ブログ

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少し遅れましたが、ご報告です。
2月6日、会場の愛知県弁護士会館ホールがほぼ満員となる多数の参加者を得て開催されました。

福岡の武藤糾明弁護士(日本弁護士連合会情報問題対策委員会副委員長)は、監視カメラの〝有用〟性について、監視カメラが犯罪抑止に役立っているというデータは、実は警察庁の研究会での検討結果でも表れなかった、ということを、川崎駅東口の事例を示して指摘されました。「防犯カメラで街は安全になる」わけではないのです。「防犯」効果と「検挙」効果、客観的な「安全」と主観的な「安心」、を混同してはいけません。
監視社会の問題点に関しては、武藤弁護士の事務所HPにもいろいろ書かれていますので、関心のある方はご覧ください。

原田宏二さん(元北海道警釧路方面本部長)は、警察の捜査権限がなし崩し的に拡大しつつあり、〝安全・安心な街づくり〟を錦の御旗に、監視カメラにとどまらない見えない監視(情報収集)の強化が進んでいる実態をお話しくださいました。また、北海道で、まだ公開捜査段階に至っていない被疑者の、コンビニの防犯カメラ映像が新聞紙上に掲載されたことなど、警察とマスコミのモラル低下の問題なども指摘されました。
警察の捜査権限のなし崩し的拡大の実態に関しては、原田さんの最新著書『警察捜査の正体』(講談社現代新書)にいろいろ書かれていますので、関心のある方はご購読ください。

なお、シンポでは、佐竹靖紀弁護士(愛知県弁護士会情報問題対策委員会委員)から、現在係争中のGPS国家賠償訴訟の報告もありました。愛知県警から無断で自動車にGPS(衛星利用測位システム)を取り付けられていた男性が、プライバシーが侵害されたとして、愛知県を訴えた民事裁判です。
この事件に関連して、各地方裁判所における、警察によるGPSの無断取り付けについての判断も報告されました。
H27.1.27.大阪地裁決定(刑事裁判の証拠能力に関する判断):違法とされる余地はあるが、証拠能力を排除するほどの重大な違法ではない。→証拠能力肯定
H27.12.24.名古屋地裁判決(同):プライバシー等に対する大きな侵害を伴うため強制処分にあたるが、違法は重大ではない。→証拠能力肯定
H28.1.22.水戸地裁決定(同):プライバシーに対する大きな侵害を伴うため強制処分にあたる。→証拠能力否定

気づかぬうちに着実に進んでいる監視社会化に、市民はこのまま安穏としていてよいのか、考えさせられる意義深いシンポでした。(浜島将周)

 

翌日の中日新聞・名古屋市民版に報告記事が掲載されました。
新聞記事 監視カメラシンポ2・6

参加者のおひとりが愛知県弁護士会情報問題対策委員会委員長として開会挨拶をする私を撮ってくださいました。せっかくなので載せておきます。
写真 監視カメラシンポ開会挨拶

 

<3.2.追記>
令状なしのGPS捜査について、違法とする地裁判決も現れる中、大阪高裁が高裁レベルでは初めての判断を示しました。(毎日新聞WEB版・3月2日読売ONLINE・3月2日

結論は適法。
GPS捜査一般について、尾行や追跡が難しい場合にも位置情報が得られるが、方法によってはプライバシーの侵害につながるとしながら、令状が必要な強制捜査に当たるかどうかについては判断せず、警察官らに令状主義を逸脱する意図があったとは認めがたい、被告人のプライバシーの侵害の程度は必ずしも大きくない、として、今回の事件についてみる限り、重大な違法があったとまでは言えない、と結論づけたようです。
GPSによる追尾は、単なる位置情報の把握にとどまらず、そこからさらに個人の交友関係、嗜好や思考までも把握しうるものです。高裁の判断は、「プライバシー」権を軽く捉えすぎているように思います。強制捜査と位置づけ、立法化の上、令状主義を及ぼすべきです。

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