緑オリーブ法律事務所ブログ

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 改正法では、不動産賃貸借を中心に、主に判例・従来の一般的な理解に基づく規律の明確化が図られました。


1. 賃貸借の存続期間の上限の伸長
  賃貸借の存続期間の上限が20年から50年に伸長されました。
  実務上の要請を踏まえた見直しで、工場等の賃貸借やレジャー施設等の設置のための賃貸借での利用が想定されています。


2. 目的物一部滅失時のルールの見直し
 1) 賃借人の帰責事由によらない目的物の一部滅失の場合
   改正法では、賃借人の賃料減額請求をまたず、当然に賃料が減額されることになりました。
 2) 目的物の一部滅失により使用収益が不能となり、残存部分では賃借人が賃借目的を達成できない場合
   賃借人の帰責事由の有無にかかわらず、賃借人は契約を解除できるようになりました。
   なお、賃借人に帰責事由がある場合、賃貸人の損害は、債務不履行の一般原則により損害賠償請求により回復することになります。


3. 賃貸人たる地位の移転およびその留保
  改正法は、契約上の地位の譲渡の特則として、賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の移転に関する規定を整備し、対抗要件を備えた不動産賃貸借につき、賃貸人たる地位を譲渡人に留保できる場合を明記しました。これにより、賃借人の個別の承諾を得ずに、一種の転貸借関係が作り上げられることになります。その後、譲渡人・譲受人間の賃貸借が終了すると、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は譲受人に移転します。従前の内容で賃借人の地位を保持できるようにして、従来の賃借人を保護する趣旨です。


4. 不動産賃借人による妨害の停止の請求等
  対抗要件を備えた不動産賃借人の賃借権に基づく妨害排除請求権・返還請求権が明文化されました。


5. 原状回復義務
  改正法では、賃借人が原状回復義務を負うことが明示され、従来の判例に従い、通常損耗や経年変化は原状回復義務の対象となる「損傷」に該当しないこと、また、従来の一般的な理解に従い、賃借人の帰責事由によらない損傷もその対象外であることが明示されました。


6. 敷金
  従前、敷金に関する一般的規定はありませんでしたが、敷金の定義、敷金返還債務の発生時期、敷金充当の各規律が整備されました。これまでの実務上の理解の明文化です。
  ただし、旧所有者の下で延滞賃料等の債務に当然充当した後、残額が譲受人に承継されるとの判例については、敷金返還債務が譲受人に当然承継されるとの部分のみを明文化されました(当然充当の部分は、実務への定着がないとの疑義から明文化されず、解釈に委ねられました。)。


7. 賃貸借における(連帯)保証人
  (個人)根保証に関する改正法の規律については、当ブログの「民法改正の話⑤ ~保証について」を参照してください。
(浜島将周)

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