今回は、遺言の効力に関する見直しについて、ご説明いたします。
これまで、特定財産承継遺言(例えば、自宅土地建物について、長男にすべて「相続させる」旨の遺言)がある場合、遺言の効力は絶対的なものとされ、これにより承継された財産については、登記等の権利関係の公示がなくても第三者に対抗できる(優先的に主張できる)とされていました(判例。遺言遺産分割や遺贈がなされた場合には、登記が対抗要件とされていました。)。
となると、「相続させる」旨の遺言さえあれば、相続人は何らの手続きを行わずとも、遺言による自分の相続分を常に確保することができたことになります。
先の例でいえば、相続人が長男・二男の2人だったとして、二男の債権者が、いまだ自宅不動産が父名義のままだったため、二男も相続したものとして二男の共有持ち分らしき自宅不動産の1/2を差し押さえても、長男は「相続させる」旨の遺言があるからと、差押えの効力を否定できることになります。
しかし、第三者である二男の債権者からすれば、遺言の内容はもちろん、存在すら分からないにもかかわらず、後からいつでも遺言の効力を主張されて、差押えの効力を否定されるという極めて不安定な地位に置かれてしまします。他方で、長男には、遺言に基づいて自宅不動産の相続登記手続を行うことができたにもかかわらず、これを放置していた落ち度があります。
そこで、今回の改正法は、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないものとしました。先の例では、第三者である二男の債権者は、長男に対して、自宅不動産の1/2に対する差押えを主張することが可能になります。
相続人の立場からいえば、遺言に基づく相続登記手続等を速やかに行い、自分の取得分を第三者との関係で守る必要性が高くなりました。
法務省作成の資料「相続の効力等の見直し」も併せてご参照ください。(浜島将周)