緑オリーブ法律事務所ブログ

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 本年5月29日にパワーハラスメントについて事業主に防止対策を義務付ける改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)が成立しました。(厚生労働省リーフレット「パワーハラスメント対策が事業主の義務となります!~セクシュアルハラスメント等の防止対策も強化 されます~」)
 同法の来年6月1日の施行に向けて、厚労省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、パワハラに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の策定が議論されていましたが、厚労省が11月20日、指針の最終案を審議会に示し、大筋了承されたとの報道がありました。(NHK・11月20日日本経済新聞WEB版・11月20日東京新聞WEB版・11月20日


 厚労省が示した「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」はこちら


 指針はパワハラを定義づけた上で、いくつかのパターンに分類し、それぞれにパワハラに該当する例と該当しない例を例示した形になっています。
 これについては素案段階から、パワハラを極めて狭く定義していることや、パワハラに該当しない例に不適当な内容が含まれていることから、使用者側に恣意的解釈の余地を残し、弁解の見本になりかねない、との批判が出ていましたが、ほとんど修正されませんでした。


 たとえば、「暴言」について、「社会的ルールを欠いた労働者に一定程度強く注意する」ことはパワハラに該当しないとされています。
 また、「隔離」について、「処分を受けた労働者に通常の業務に復帰させる前に別室で必要な研修を受けさせる」ことはパワハラに該当しないとされています。
 私の経験則でも、これらは使用者が言いがちな弁解のようで、率直なところ、これでパワハラが十分防げるか疑問です。


 素案段階に対するものですが、指針の問題点を日本労働弁護団がまとめていますので、お読みいただければと思います。(日本労働弁護団「パワハラ助長の指針案の抜本的修正を求める緊急声明」・2019年10月21日)


 折しも、トヨタ自動車の社員や神奈川県庁の職員が上司からのパワハラが原因で自殺した事件についての報道が相次ぎました。
 厚労省は指針最終案へのパブリックコメントを募集した上で、年内にも正式決定する方針のようですが、慎重な検討を求めます。(浜島将周)

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