今回は、配偶者の居住権保護のための方策の2つめ
配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための方策
について、簡単にご説明いたします。
この比較的長期間の居住権保護の方策を「配偶者居住権」といいます。
これは、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合において、その居住建物の全部について無償で使用および収益をする権利を取得する、というものです。
居住建物についての権利を「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分け、配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付き所有権」を取得することができるようにしたわけです。
この配偶者居住権は、
① 遺産分割における選択肢のひとつとして
② 被相続人の遺言等によって
③ 家庭裁判所の決定によって
のいずれかよって、配偶者に取得させることができます。
ただし、被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には認められません。
なお、
⑴ 配偶者居住権は、相続開始時に、その建物に住んでいた配偶者にだけ認められます(別居していた夫婦の間では認められません。)。
⑵ 配偶者居住権は、その旨の登記をしなければ効力が認められません(居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。)。
⑶ 配偶者居住権を相続した配偶者は、これを他人に売却することはできません。配偶者居住権は配偶者の死亡によって消滅するため、さらに誰かに相続させることもできません。
ちなみに、配偶者が死亡する=配偶者居住権が消滅すると、負担付所有権を相続していた相続人が、負担のない(通常の)所有権を有することになります。したがって、配偶者が死亡した=居住権が消滅した後は、所有権を有する相続人が、自分で住むのも、取り壊して建て替えるのも、他人に売却するのも自由です。
以上の配偶者居住権は、2020年4月1日以後に開始する相続において適用されます。
また、2020年4月1日以後に作成する遺言書において配偶者居住権を記載できます。
法務省作成の資料「配偶者居住権について」も併せてご参照ください。
(浜島将周)