ハラスメント(嫌がらせやいじめ)の禁止を定める法律の制定を求めて、日本労働弁護団等が、厚生労働省に署名と要望書を提出したとの報道がありました。(朝日新聞DIGITAL・11月26日)
これまで、不十分ながらも、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)やマタニティ・ハラスメント(マタハラ)については、法律で企業に防止措置をとることが義務づけられてきました。
これに対して、パワー・ハラスメント(パワハラ)については、そのような法律はなく、国の対策は企業の自主的な努力を促す周知・啓発にとどまっていました。
ここにきてようやく、厚労省が、パワハラ防止のための法律を整備する方針を示したところです。(朝日新聞DIGITAL・11月16日)
職場でのとんでもないパワハラ行為が、しばしばメディア等に取り上げられるなどして、社会問題化してきましたが、これに対する法規制となると何故か進まず、周知・啓蒙して様子をみましょうという状況が続いていました。
しかし、パワハラはいっこうに減少せず、むしろ労働局の相談件数等みると増加傾向で、もう「さらなる周知・啓蒙で…」とはいっていられない状況です。厚労省が法制化に舵を切ったのも当然でしょう。
ただ、今回の法律の中身はというと、セクハラと同様で、事業主にパワハラ防止措置を講ずる義務を課すにとどまるとみられます。このため、すでにマスコミからは、効果を疑問視する声も上がっています。(「パワハラ対策を企業に義務付け 厚労省が法案提出へ 実効性課題」産経新聞Biz・11月24日、「パワハラ対策 実効性課題 防止義務法制化案 行為の禁止盛らず」東京新聞Web・11月25日)
これらの記事でも指摘されているとおり、ハラスメントを減らしていくには、事業主に措置義務を課すだけでは不十分で、ハラスメント行為を禁止する規定が必要だと思います。
それでも、パワハラについて、定義づけもなければ措置義務すら規定されていない現状からみれば、前進したと評価できます。社会の変化や市民意識の変化とともに、つくられた法律をよりよいものに変えていきましょう。(浜島将周)
参考
『職場のいじめ・嫌がらせに対する立法を求める意見書』(日本労働弁護団)
『職場のハラスメント防止法を作ろう! 集会アピール』(日本労働弁護団HPより)