福岡県警が、ビッグデータを利用して、暴力団の襲撃を予測するシステムの開発に着手した、との報道がありました。(産経新聞WEST・8月10日)
記事によれば、「県警が壊滅作戦に着手した特定危険指定暴力団K会から証人や情報提供者を守るため、組員らの行動パターンを基に襲撃の予兆を把握するシステムの開発を始めた」、「県警は、これまでの捜査で組員らが事件直前、車で襲撃場所の下見をするなど普段と違う行動を取っていることに着目。捜査員が尾行で確認した組員らの動向や車の使用状況といったデータをコンピューターで解析し、襲撃時期や地域が予測できるようにする」ということですから、ビッグデータの活用というほど大袈裟なものではなく、これまで警察官の〝勘〟によっていたことに理屈づけをしたくらいのものかもしれません。また、対象は〝暴力団〟であり、理由は〝証人や情報提供者を守るため〟で、分析結果は〝襲撃の予兆を把握する〟ことに限られるようですから、市民生活への介入は少なく、むしろ歓迎されるべきことかもしれません。
しかし、このようなシステムの開発は、デジタル技術による一般市民の行動監視の危険性をはらんでいることに注意しなければなりません。
実際、例えばアメリカでは、シカゴ市警察が犯罪予測システムを導入し、凶悪事件が激減したとの成果が上がったとされています。日本でも、神奈川県警が人工知能(AI)を使って事件・事故の発生を予測する新システムの導入を検討していると報道されています。(朝日新聞DIGITAL・2月7日)
さらに、これらの取組みが、単なる犯罪・事故予測にとどまらず、「犯罪を犯しやすい人物予測」に至ればどうなるか。あるいは、「Nシステム」や「監視カメラ」網とつながればどうなるか。かつて主役トム・クルーズで大ヒットした映画『マイノリティ・リポート』の世界が目の前に迫っていることが危惧されます。監視カメラ網が発達した中国では、すでに現実となっているともいわれています。
私たちは、〝安心・安全な社会〟と引き替えに、国家にプライバシーを手渡し放棄していることを自覚しなければなりません。(浜島将周)