政府が27日の閣議で、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法案を決定した、との報道がありました。全国で3カ所までカジノの設置を認めるほか、日本人客から入場料として1回6,000円を徴収することが柱だそうです。(時事通信JIJI.COM・4月27日)
すでに2016年12月15日、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)が成立していましたが、その本格実施に取りかかったわけです。
カジノは本来、「賭博罪」(刑法185条以下)に該当します。最高裁昭和25年11月22日判決はその趣旨について、「単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の幣風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基盤を成す勤労の美風(憲法第27条1項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」と述べています。日本書紀には、持統天皇が賭博を禁じたとの記載もあるそうで、日本では古来より、賭博は人と社会を破壊するものとして一貫して禁じられてきたわけです。
また、自己破産手続においても、「…賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担した」債務者については、不誠実であって債務(借金)の支払義務を免除させることは適切でない、とされ、免責が認められないことがあります(破産法252条1項3号)(当ブログ「免責不許可事由」とは2016.8.18.参照)。
そうすると、カジノ解禁は、大袈裟に言えば、日本の伝統や法体系の破壊行為です。
とはいえ、他方で実は、日本ではすでに賭博が非常に身近なものになっています。公営の競輪・競馬等がありますし、街中にパチンコ店が多数あるからです。
パチンコで遊ぶ金欲しさからの犯罪や、炎天下の駐車場で幼児が置き去りにされ死亡する事故といったパチンコ関連事件が、繰返し報道されています。通常のレジャー施設では発生しないであろうこのような事態は、パチンコのギャンブル性=射倖性と依存性が招いているものです。日本は諸外国に比べても、ギャンブル依存症の方の割合が高いとされています。(日本経済新聞Web・2017.9.29.)
カジノ解禁は、必然的に一定割合の病的賭博依存を生み出すことになります。それが分かっているのにあえて実施しようというのです。
推進派からは、「弊害を最小化する対策を講じる」「弊害を超える利益が生じる」などの声が聞かれますが、これは、一部事業者や自治体の利益のために、それによって必然的に生まれる被害者の犠牲を容認するものであって、あまりに身勝手で無責任でしょう。
日本弁護士連合会では、5月9日(水)、「カジノ解禁に反対する」パレードおよび院内学習会を開催します。→チラシはこちら
愛知県弁護士会では、5月12日(土)、シンポジウム「カジノ作って本当に大丈夫?」を開催します。→チラシはこちら
お近くの方、是非ご参加ください。(浜島将周)
<5.14.追記>
ギャンブル依存症の根深さについて、元関脇の貴闘力さんが自らの経験を語ったインタビュー記事がありました。(朝日新聞DIGITAL・5月12日)
それでもカジノ解禁に向かうのか、政府には考え直していただきたいです。(浜島将周)