昨年10月22日に行われた衆議院総選挙に関する一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)について、2月7日、濵嶌も原告代理人を務めた名古屋高裁訴訟(愛知・岐阜・三重の全24選挙区分)の判決がありました。大きく報道されたので、目にされた方も多いと思います。(メ~テレ・2月7日、CBC NEWS・2月7日、朝日新聞DIGITAL・2月8日、毎日新聞WEB・2月8日など)
私たちが提起した全14高裁・高裁支部での訴訟のうち11件目の判決です。
これまで10件の「合憲」判決が続いた中、初めての「違憲状態」判決となりました。
その10件の判決は、札幌高裁を除き、「2倍未満だから合憲」という単純な判断ではなく、「平成32年の国勢調査に基づいてアダムズ方式による定数の再配分とそれに基づく選挙区割りがなされることは確実な状況にある」(福岡高裁那覇支部)など、国会の努力の姿勢をも加味しての合憲判断でした。
しかし、国会が努力すれば、不平等が平等になるというのは、理屈になっていません。
この点、名古屋高裁判決は、「議員一人あたりの選挙人数ができる限り平等に保たれる」ことが憲法の要請であり、「2倍未満の人口較差であれば、どのような選挙区割りを定めることも容認するものではない」ことを明確に指摘し、かつ、国会がアダムズ方式の導入を決めながら、その作業を平成32年の国勢調査後に先送りしたため、「一人別枠方式の構造上の問題点は解消されていなかった」ことも指摘して、「なお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」と判断しました。実質的な「一人一票」判決だといえ、高く評価できると考えます(ただし、合理的期間論により、結論としては選挙無効とはしない「違憲状態」判断)。
なお、この名古屋高裁判決については、毎日新聞の記事がうまくまとめられています。
残る3件(+別の弁護士グループが提起した2件)の判決を待って、舞台は最高裁に移ります。
年内にも言い渡されるであろう最高裁判決は、残念ながら、おそらく合憲判断となるでしょう。それでも、最高裁には、安倍政権や国会に忖度することなく、あなた方議員は「正当に選挙」されておらず権力行使の正統性に疑問があるのだと、少しでも言及してもらえることを期待しています。(浜島将周)
<2.22.追記>
上記のように評価できる判断ではありましたが、弁護士グループ内で議論し、名古屋高裁判決についても上告することにしました(2月20日付)。(毎日新聞WEB・2月21日、メ~テレ・2月20日)
名古屋高裁判決についての、私たちの考える問題点は、下記の3点です。
1.一人一票の原則(人口比例)を明言しなかったこと
「できる限り平等」との表現はありましたが、このフレーズは最高裁がこれまで使ってきたフレーズでもあり、必ずしも一人一票の原則に言及したものではないと判断しました。
2.合理的期間論を採用したこと
「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」といいながら、合理的期間を徒過していないから無効ではない、というのは、理屈になっていません。国会を免罪するだけの論理です。
3.国民主権論に言及しなかったこと
名古屋高裁判決は、平等原則違反(憲法14条違反)を理由とした違憲状態判決です。
私たちは、14条違反の議論を否定するものではありませんが、「国民の多数が国会の多数のシステムでなければならない」という国民主権論(前文1項、1条、56条2項)を主張しています。この主張に一切触れられていませんでした。
最高裁の統一判断を求めます。