遅くなりましたが、ご報告です。
去る12月2日、東別院ホールにおいて、標記の講演と対談が行われました。
「これがなければ東京オリンピック・パラリンピックは開催できない」「テロ対策として必要だ」として、本年6月15日に制定された共謀罪法(「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」)。すでに施行もされています。
この共謀罪法について、基調講演講師の髙山佳奈子さん(京都大学法科大学院教授(刑事法))は、さまざまな角度からその問題点を指摘されました。
1.日本の刑法体系と不整合である
共謀罪法は英米法で発展してきたもので、大陸法計の日本法の犯罪対策にはあわない。
2.国連条約の内容と不整合である
「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(TOC条約、パレルモ条約)批准のために必要との説明がされるが、国連条約も共謀罪立法を必須としていない。
今回の共謀罪法制定の過程で600の対象犯罪が277に絞られたが、その選別の仕方が条約の趣旨に反している。
3.「オリンピックのため」ではない
日本で従来、オリンピック招致と共謀罪立法が結び付けられて議論されたことはなく、ごく最近になって出てきた口実にすぎない。
4.「テロ対策のため」ではない
国連条約はテロ対策でなくマフィア対策を内容とするものであって、今回の共謀罪法にもテロ対策のための条文はひとつもない。
5.内容の無限定性
今回の共謀罪法は無限定であって、「テロ等準備罪」の名称を掲げていてもその実態をもたない。
与党が出していた説明資料には、現行法で対応可能なことも「共謀罪法がなければ処罰できない」などと虚偽の情報が複数含まれていた。
6.治安の向上につながらず市民を圧迫するだけである
共謀罪立法は実際には、テロ防止や治安向上には役に立たず、冤罪事件などの人権侵害を助長するだけのものである。
7.国会運営も異常だった
先に上程されていた重要法案を押しのけて審議され、委員会採決を省略する中間報告をしてまで採決を急いだ。
そして、このような問題点しかない共謀罪法の制定を急いだ背景には、現政権の重大疑惑から国民の目をそらす、警察の権限を拡大する、アメリカの世界戦略を利するなどの疑いがある。
続いて行われた対談では、中谷雄二さん(弁護士、愛知県弁護士会秘密保護法対策本部副本部長、秘密法と共謀罪に反対する愛知の会共同代表)が、共謀罪法が今後の日本社会に与える影響について言及されました。
今回の共謀罪法は、内容の無限定さゆえに、誰もが逮捕される可能性がある。そして、一度逮捕されてしまえば、後に身の潔白が証明されようが失った社会的地位は二度と回復されない。この不利益の甚大さから、市民は知らず知らずに萎縮し、多数派に同調するようになる。
共謀罪の問題点をあらためて整理でき、廃止への思いをさらに強くしました。
愛知県弁護士会は、今後も共謀罪法廃止に向けた活動を続けていきます。(浜島将周)