間もなく召集予定の臨時国会の冒頭にも衆議院が解散される、と報道されています。(読売新聞ONLINE・9月18日)
この解散について、「大義なき解散」「自己都合解散」で「解散権の濫用」だなどといわれていますが、そもそも「解散」とはどのような制度でしょうか?また、誰が、どのような時にできるものでしょうか?
1. 「解散」とは?
「解散」とは、議院を構成する議員の全部に対して、任期満了前において、一斉にその身分を失わせることをいいます。
日本では、衆議院に対してのみ解散が行われ(日本国憲法7条3号、45条、54条1項・2項、69条)、参議院にはありません。
2. 何のために解散制度があるのか?
大きく分けて、
①政府の議会に対する対抗手段
②解散後の総選挙において、重要な政治課題について、国民に信を問う
という2つの目的があります。
3. 誰が、どのような時に解散を決定し得るのか?
解散は天皇の国事行為とされていますので(7条3号)、形式上は解散を行うのは天皇ですが、問題はその実質的決定権者と、その根拠および権限の範囲です。これは「解散権論争」と呼ばれる問題で、学説の対立があってややマニアックですので、詳しくは触れません。
結論として、解散権が内閣のみにあることにほぼ争いはありません。
その上で、解散は衆議院による内閣不信任があった場合(69条)に限られるのか、それに限られない無制限の解散権を認めるのかの争いがありますが、無制限説が通説です。「解散は内閣総理大臣の専権事項」だといわれる所以です。
ただし、近年は、この無制限とされた内閣の解散権について、「内閣に解散権を委ねたのなら、その行使は民主的観点から見て正当な役割を果たすといえる場合に限定すべきである」(故 深瀬忠一 北海道大学名誉教授)、「解散は国民に対して信を問う制度であるから、それにふさわしい理由が存在しなければならず、内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散は不当である」(故 芦部信喜 東京大学名誉教授)などとし、例えば、
a.内閣と衆議院との意思が衝突した場合(重要案件否決・審議未了)
b.内閣の性格が基本的に変わる(変わった)場合
c.総選挙時に国民の承認を得ていない新しい重要政策(立法・条約締結等)に対処する場合
d.選挙制度の大改正のあった場合
e.議員の任期満了時期の接近
に限るべきだ(故 深瀬忠一 名誉教授による)、というように一定の制限を求める立場が有力です。
この立場によれば、今回の解散は解散権の濫用事例ということになるでしょう。
4. いずれにしても投票に行きましょう!
今回の解散に大義があろうがなかろうが、衆議院が解散されれば、その後に総選挙が行われます。そこで自分たちの意思をはっきり示し、国政に反映させることが大切です。
投票所に足を運び、あなたの1票を投じましょう。
…ただし、いわゆる「一票の格差」問題が依然としてありますので、今回の総選挙後も、「一人一票」実現訴訟が提起されることになると思います。一人一票実現国民会議のHPものぞいてみてください。(浜島将周)