性犯罪に関する刑法の一部が改正され,2017年7月13日,施行されました。
主な改正点は,次のとおりです。
①従来の「強姦罪」では女性に対する膣性交だけを対象としていましたが,改正後の「強制性交等罪」は,被害者の性別を問わず,肛門や口腔を含めた性交を対象行為としました。
同罪の法定刑の下限は懲役5年,同罪の致死傷罪の法定刑の下限は懲役6年となりました。
②18歳未満に対して,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為や性交等をした場合は,強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様に処罰されるという規定が新設されました。
③従来の強姦罪や強制わいせつ罪等は親告罪でしたが,非親告罪(告訴がなくても公訴提起できる)となりました。
本人の意に反する性行為は“暴力”であり,法律上の一定の要件をみたすものは違法です。
性犯罪は,被害者の人格と尊厳を深く傷つけ,場合によっては一生にわたり,心身に傷を負わせ,悪影響を及ぼすため,「魂の殺人」と言われています。
刑法の性犯罪に関する規定について,犯罪の性質,被害実態に見合う構成要件とし,処罰の適正化をはかることは,犯罪予防にも重要なこととして,被害者や支援者の長年の悲願でした。
今回の改正法には,施行後3年をめどに見直しをする旨の附則がつき,衆参両議院では下記の趣旨を含んだ附帯決議もされました。
政府や裁判所に求められるのは,科学的知見や経験則をふまえて「暴行・脅迫」などの要件を認定する,司法関係者が研修等により必要な知見と専門性を身につけて二次被害を防止しながら対応する,被害者が相談・支援に繋がりやすい社会的基盤を整備する,被害者を責める風潮や社会的偏見をなくし,被害が潜在化しないようにすることなどです。
性犯罪の罰則に関して,これまで政府の検討会や法制審議会などで指摘されながら,今回の改正では反映されず,残された課題も多くあります。
性暴力・性被害をなくしていくため,社会から「見えない」ようにされている被害が見えるようになり,上げられない被害者の「声」がきちんと届くよう,個々の事件や弁護士会の活動を通して,私も微力ながら取り組んでいきたいと思います。
(橫地明美)