安倍首相が「過労死をなくしていくという強い決意」で臨んでいるという政府の働き方改革ですが、繁忙期の残業上限を「月100時間未満」とすることで、経団連の榊原定征会長と連合の神津里季生会長が合意した、とのことです。(日本経済新聞Web版・3月13日など)
具体的には、月45時間を超える残業時間の特例は年6か月までとし、年720時間の枠内で「1か月100時間」「2~6か月平均80時間」の上限を設けるようです。労働基準法改正により罰則付きの残業時間の上限規制が初めて設けられることになります。
今日17日の働き方改革実現会議で、これが正式決定される見通しです。
100時間「以下」か「未満」かで議論が対立し、最後は安倍首相が判断した、と報道されていますが、「以下」か「未満」かなど日本語でいえば1秒の問題。本質的な問題ではありません。
厚生労働省は「1か月で100時間超」または「2~6か月平均で月80時間超」の残業を、過労死につながる脳・心臓疾患の労災認定基準として定めています。
その基準そのままで線引きすることは、「過労死寸前まで働かせても問題ない」という間違ったメッセージを発することにつながりかねませんし、従業員はそのような残業命令を拒否しづらくなるでしょう。
〝働き方改革〟の名に値しない、といわざるを得ず、過労死遺族らが反発しているというのも当然だと思います。(東京新聞WEB版・3月14日、同・3月16日)
くしくも、電通事件に続き、パナソニック関連会社の従業員の自殺について過労死と認定され、パナソニックが書類送検されたとの報道がありました。(朝日新聞DIGITAL・3月3日、産経新聞WEB版・3月16日)
罰則付きの上限規制をつくること自体はよいことです。
しかし、厚労省の過労死ラインを超えなければ、使用者が安全配慮義務を果たしたことになるような立法ではいけません。過労死ラインに近い働かせ方をすることはおかしいのだ、とはっきりさせるべきです。(浜島将周)
<3.22.追記>
濵嶌も所属している東海労働弁護団が、3月17日付で『時間外労働の上限規制に関する声明』を発表しました。
時間外労働時間の上限規制として、「少なくとも厚生労働大臣告示で定める「月45時間以内」「年360時間以内」に基づいて規制がなされるべきである」と提言しています。