もはや国政選挙後の風物詩の感がありますが、一昨日7月10日の参議院通常選挙のうちの都道府県選挙区(一部で合区がされたため45選挙区)について、昨日11日、一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)が全国一斉提訴されました。
名古屋高裁管轄の愛知県、岐阜県、三重県の3選挙区についても提訴し、夕方のニュースにもなりました。(NHK・7月10日、CBC・7月10日など)
おそらく裁判官が重視するであろう今回の最大の争点は、鳥取県・島根県と徳島県・高知県の合区を含む「10増10減」の評価でしょう。
しかし、私たち弁護士グループは、それは争点ではないと考えています。「10増10減」によっても最大較差(最大の埼玉県と最小の福井県との一票の格差)は約3倍=一人0.3票だからです。追求すべきは〝1倍〟=一人〝1票〟の実現であって、誰にも等しく1票ずつが与えられていなければ、投票価値は平等ではなく、民意を正しく反映した国会とはいえません。
他方で、とくに合区の対象となった各県からは、「地方の声の切り捨てだ」との声も聞かれます。 この点、国会議員は都道府県の代弁者でなく、「全国民の代表」(憲法43条1項)ですから、そもそもそのような批判は当たらないのですが、ただ、議員の実態として、選挙区の代表者の色合いが濃いのも事実です。
すでに最高裁が指摘していることですが、もはや都道府県を単位とした選挙制度は限界に来ています。都道府県を単位としたまま、現状のように比較的地方に議席配分の高い状態を維持すれば、都市部の有権者に不公平感が生じ、逆に、一人一票を進めていけば、さらなる合区をせざるを得なくなりますから、地方の有権者に疎外感が生じるからです。
選挙についていえば、選挙区割りを含めた選挙制度の合理性と、それに対する国民の信頼と納得の両方があって、はじめて民主主義の正統性が備わります。国会は、参議院の都道府県選挙区について、多少の合区や定数の見直しといった弥縫策でお茶を濁すのではなく、根本的な制度の見直しを、しかも迅速にすべきです。
なお、ここ数回立て続けに、衆院選についても参院選についても、最高裁が「違憲状態」であると判断しています。つまり、今の国会は衆参とも「違憲状態」議員の集まりです。したがって、そこで指名された総理大臣も「違憲状態」首相です。 「違憲状態」首相が陣頭指揮を執って、「違憲状態」国会で憲法改定作業を進めて、改憲の発議をしてよいはずがありません。「違憲状態」の者たちに改憲手続を進める資格など無いはずだからです。
まず国会がすべきは、最高裁から突き付けられた、衆参両院の選挙制度(区割り)についての「違憲状態」の解消です。(浜島将周)