警察による捜査対象者の車両へのGPSの無断取り付けについて、以前にもこのブログで取り上げましたが(
2016.2.12.「シンポジウム『安心・安全?監視社会~今も、あなたは視られている!~』のご報告」)、6月29日、名古屋高裁で重要な判断が下されました。(
毎日新聞WEB版・6月29日、
中日新聞WEB版・6月29日)
名古屋高裁は、GPS捜査が捜査対象者のプライバシーを大きく侵害する危険性があるため、令状発付が必要な「強制捜査」に当たり、裁判所の令状なしでのGPS捜査は違法だとの判断を示しました。
GPS捜査に関する高裁判断は、以前にもご紹介した今年3月の大阪高裁に続いて2例目です。
その大阪高裁判決は、強制捜査に当たるかどうかについては判断せずに適法だと結論付けていました。
これに対して、今回の名古屋高裁判決は、
対象者に気付かれず、容易に正確な位置情報を常時取得でき、交友関係や思想・信条等の個人情報を明らかにできるというGPS捜査のプライバシー侵害の危険性を重視して、違法だと判断したこと
に加え、
GPS捜査については、立法規定がないまま、全国の警察が警察庁の運用要領に基づき、「任意捜査」として令状なしでも可能との立場で(無限定に)行われてきた現状に対し、「新たな立法的措置も検討されるべきだ」と言及したこと
が画期的です。
この判決が指摘するとおり、GPS捜査のようなプライバシー侵害の危険性が高い捜査方法については、現代型の強制処分として、立法措置が必要だというべきです。警察庁および国会の迅速かつ賢明な対応を望みます。
なお、具体的な証拠能力に関しては、弁護側が、GPS捜査で把握した立ち回り先のビデオ映像は違法に収集された証拠だとして一部無罪を主張したのに対し、名古屋高裁は、違法捜査との関連性は強くないと証拠能力は認めたようです。(浜島将周)