徳山ダムの水を木曽川に流すための木曽川水系連絡導水路事業(木曽川導水路事業)に対する愛知県の費用負担金支出差止請求住民訴訟について、最高裁判所は上告を退ける決定を出し、住民側の敗訴が確定しました。(
NHK NEWS WEB・6月1日、
朝日新聞DIGITAL・6月1日)
徳山ダム導水路事業は、以下の二つを事業の目的としています。(以下、詳しくは
「導水路いらない!愛知の会」HPをご参照ください。)
①流水正常機能の維持:木曽川水系の異常渇水時において、徳山ダムに確保される流水正常機能の維持を図るための容量の一部を長良川を経由して木曽川に導水し、河川環境の改善を確保する。
②新規利水の供給:徳山ダムに確保される愛知県の水道用水最大2.3㎥/s(供給地域は愛知用水地域)および名古屋市の水道用水と工業用水最大1.7㎥/s を導水し、木曽川において取水を可能にする。
しかし、世論の反対の声を押し切って、相次いで強行建設された長良川河口堰と徳山ダムの水が、今なお、ほとんど使用されずにいることからも明らかなように、木曽川水系は完全な〝水余り〟状態です。これ以上、税金を投入して公共事業をすることは、ムダとしか言いようがありません。
水道行政に責任を負う厚労省も、2013年3月の『新水道ビジョン』において、これからは人口減少と節水により水需要が減少する時代を迎えるという認識を示して、過大な水源開発に警鐘を鳴らすとともに、財政の健全化のために自治体の水道事業の縮小も視野に入れた運営の再構築を求めているところです。
こうした地域の実情や時代の趨勢を省みることなく、行政が策定した水資源開発計画にお墨付きを与えた一審・名古屋地裁判決および二審・名古屋高裁判決は、司法の責務を放棄したものでした。
これを最高裁が追認したことは、自ら裁判所の権威を貶めていると言わざるを得ません。
残念ながら、これで木曽川導水路訴訟は終了しました。
しかし、もともと河村たかし・名古屋市長は、2009年5月に、「木曽川導水路事業からの撤退」を表明していました。また、2011年の市長選挙では(大村秀章・愛知県知事との共同公約において)、「木曽川導水路事業の見直し」を表明していました。
その後、市長はだんまりで、知事は公約を軌道修正してしまったのですが…英断を期待しています。(浜島将周)