遅くなりましたが、シンポジウムのご報告です。
3月26日(土)、熱気に満ちたシンポジウムが開催されました。(
毎日新聞・3月27日)
青島 顕さん(毎日新聞社会部記者)は、基調講演『秘密保護法の今』において、秘密保護法が施行されて1年余、取材活動の現場では、表面上は何も変わっていないように見える、と発言されました。
しかし、その一方で、例えば青島さんが防衛省のとある研究機関の研究者に取材申し込みしたところ、これまで取材には快く応じてくれていた研究者だったにもかかわらず、取材不許可となったことなど、取材を受ける側に萎縮が生じている、この取材の困難さが、国民の知る権利にとってもマイナスになる、と指摘されました。
また、秘密保護法は、今はなんてことなくても、有事の際に威力を発揮するはずだ、とも指摘されました。
新海 聡さん(愛知県弁護士会秘密保護法対策本部事務局長、NPO法人 情報公開市民センター理事長)による基調報告『秘密保護法成立文書過程情報公開訴訟の現状』
内田 隆さん(名古屋市民オンブズマン事務局長、NPO法人 情報公開市民センター事務局)による基調報告『特定秘密を情報公開請求したらどうなる?』
においても、それぞれ興味深い報告がありました。
この3人を交え、濵嶌がコーディネータを務めたパネルディスカッションでも、活発に意見が交わされました。
秘密保護法についてもっとも大きな問題は、取材の自由を侵害し、国民の知る権利を侵害することです(憲法21条)。
この点について、青島さん、新海さんは揃って、「秘密保護法は条文上、取材行為を処罰することができる。ただ、記者やジャーナリストを同法違反容疑で直接逮捕、処罰することよりも、同法違反容疑の名目で、家宅捜索して関係資料をごっそり持って行くことの方が現実味があるし、それで十分に取材する側に対する牽制になる」ことを指摘されました。
実際、2014年、「イスラム国」に戦闘員として加わろうとしたとして北海道大学の男子学生が、「私戦予備・陰謀罪」容疑で警視庁(公安部)から家宅捜索や事情聴取をされた事件がありましたが(当ブログ
『私戦予備・陰謀罪とは?』2014.10.10.参照)、この事件について、「本来刑法の私戦予備・陰謀罪は他国との組織的な戦闘の準備などを想定したもので、これを単にイスラム国の戦闘に参加しようと計画していた一人の学生に適用するのは明らかな拡大解釈である。にもかかわらず、適用した。男子学生はその後、逮捕されることもなかった。しかし、男子学生のほか、男子学生をイスラム国に紹介したとして、イスラム学者(同志社大学教授)の中田 考さんと、イスラム圏の取材経験が豊富なフリージャーナリストの常岡浩介さんの自宅も家宅捜索された。あのときの狙いは常岡さんで、まず組織的援助のないフリージャーナリストを家宅捜索してみて、マスコミの反応を探ったのではないか」との発言もありました。私戦予備・陰謀罪に比べて、秘密保護法違反容疑による家宅捜索は、よりやりやすくなるでしょう。
最後に、青島さんから、「情報公開法が成立して15年、民主党政権時に検討された情報公開法の改正は店ざらしのまま。公文書管理法が成立して5年、見直しの時期だが議論はほとんど盛り上がっていない。秘密保護法に関する(マスコミの)関心も薄れてきた。これらをリンクさせ、もっと市民に関心を呼び起こしたい」との決意(?)が述べられました。
参加者がやや少なかったのは残念でしたが、非常に面白いシンポジウムだったと思います。
愛知県弁護士会は、引き続き秘密保護法に対して、「反対!」の声を上げ続けていきます。(浜島将周)