緑オリーブ法律事務所ブログ

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「忘れられる権利」
2016-02-29 · by blogid · in 情報問題,
インターネット検索サイトGoogleの検索結果から、自身の逮捕に関する記事の削除を男性が求めた仮処分申立てで、「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」として、削除を認める決定が出されていたそうです。(産経ニュース・2月28日

忘れられる権利」とは、まだはっきりとは定義づけられていませんが、インターネット上に残り続ける個人情報・プライバシー情報の削除を求める権利、をいいます。
現代のインターネット社会では、一度どこかで書き込まれた個人の情報は、誰かがコピーするなどして拡散し続け、どこかに残存し続けますから、完全に消去することはほぼ不可能です。しかも、それが誤った情報だったり、正しくても特段他人が知るべきでない機微情報だったりもします。また、事実であったとしても、例えば犯罪についていうと、犯罪者に対する刑罰は刑事司法のシステムの中で国が科すものであって、過ちを犯したからといって社会的に抹殺されて更生を妨げられてよいことにはならない以上、インターネット上の〝私刑〟が無制限に許されてよいはずがありません。

この「忘れられる権利」は、EUではすでに、立法化の動きもあり、また一定の条件で裁判でも認められている権利です。

他方、日本では、まだ議論が始まったばかりです。
また、日本では、プロバイダがウェブサイトの削除要請に自主的に応じていて、また、GoogleやYahoo!JAPANも検索エンジンによる検索結果の削除要請に自主的に応じていて(今回の事件の男性の逮捕歴も、現在は検索結果に表示されないそうです。)、裁判に至る前に一定の解決をみることも多いため、あまり活発に議論がされてこなかったともいえそうです。
今回、日本の裁判所としておそらく初めて、「忘れられる権利」という言葉を使って、これを正面から認めたものだと思われます。上級審で継続審議中とのことです。表現の自由・知る権利との兼ね合いもありますので、議論の行方に注目したいと思います。(浜島将周)

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