婚姻費用を決めて請求したい
2015-04-03 · by blogid · in
離婚・DV ,
婚姻費用というのは、夫婦が互いに分担すべき生活費です(いわゆる内縁関係、事実婚の方も同様)。
夫婦が同居しているときも分担しあいますが、法的な紛争としてあらわれるのは、生計が別になったとき、すなわち別居時から、離婚または再度同居するまでの期間についてです。
分担額の基本的な考え方としては、夫と妻が、それぞれの収入に応じて負担します。
ここで、分担する前提としてのその家族の「生活費」とはどういう程度のものでしょうか。
夫婦と親子以外の親族間における扶養義務の場合は、最低生活レベルでたりるとされますが、夫婦間や親子間(養育費も同様です)では、支払う側の配偶者が、支払を受ける側の配偶者や子どもに対して、自分と同じレベルの生活ができる程度の金額を分担する義務があります。
次に、婚姻費用の金額を決めるための手続・方法としては、当事者間での話し合い(協議)、家庭裁判所での婚姻費用分担調停や審判があります。
協議の場合、合意できるならばどのような金額でも自由です。
家庭裁判での調停の場合も、基本的には話し合いですので、金額は当事者が自由に決められるのが前提ですが、話し合いをスムーズに行うため、いわゆる「算定表」が利用されています。お子さんの人数や年齢(2段階)と夫婦双方の収入に応じて、だいたいの金額の幅が決められています。
調停での話し合いがまとまらない場合は、自動的に審判手続に移行しますが、審判でも裁判官が、「算定表」を使って金額を決めています。
なお、調停・審判で、さかのぼって支払義務を認めてくれるのは、申し立て時点とされるのが通常です。
たとえば、今年1月に別居し、4月に婚費の調停を申立て、7月に調停が成立した場合、4月分~6月分は一括して(成立日や支払者の給料日等の事情にもよりますがたとえば7月末に)支払い、7月分以降は毎月支払う、というような内容になります。
同じ例で、調停が不成立となり9月に審判が出たとすると、4月分~8月分は(決定日にもよりますがたとえば9月末に)一括して支払え、9月分以降は毎月支払え、というような内容になります。
算定表の金額は、安心して生活するには決して十分ではなく、その基礎となっている考え方については批判もあり日弁連も意見書を出しているところですが、実務的にはこのような運用となっています。
婚姻費用の金額は決まったけれども、きちんと支払がない場合は、調停調書や審判決定書があれば、強制執行(いわゆる差し押さえ)ができます。
協議で金額を決めた場合、単なる口約束や合意書では差し押さえはできませんので、支払にご心配があれば、合意の際に公正証書を作成することをお勧めします。(横地明美)