内部告発者捜しで上司が自宅に無断で侵入し、郵便物を盗むなどしたため精神的苦痛を受けたとして、某不動産賃貸大手の元契約社員が会社に対し慰謝料の支払を求めた訴訟で、福岡簡裁が、「内部告発に関する情報を得るためで、明らかに不法行為」と指摘し、同社に14万円の支払いを命じた、との報道がありました。(
毎日新聞WEB版・1月23日)
不正を告発した企業の従業員や公務員らを保護するための仕組みとして、「公益通報者保護法」があります。
同法は、公益通報(内部告発)を理由とした解雇を無効とするなど(同法3条柱書)、通報者(内部告発者)に対する不利益取扱を禁じています(同法5条)。
しかし、同法には、不利益取扱をした企業側に対する罰則規定がありません。
また、解雇無効の要件として、従業員らが当該企業内部でなく、報道機関など外部に告発できるのは、
① 公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
② 公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
③ 労務提供先から公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
④ 書面により公益通報をした日から20日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
⑤ 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合
の各場合に限っています(同法3条3号)。
これでは、企業側は通報者に対し不利益取扱することを躊躇しないでしょうし、従業員らは公益通報をするのを躊躇してしまうでしょう。
内部告発者が広く保護される仕組みづくりを進めるべきです。
なお、「秘密保護法」に関して、同法には内部告発者保護に関する規定がないため、国が違法・不正なことをしても、それが「特定秘密」に指定されてしまえば、公益通報者保護法が機能しなくなるのではないか、との懸念が指摘されています。
この点は、秘密保護法の大きな問題点のひとつです。(浜島将周)