このブログでもご協力を呼びかけていた
過労死防止法(過労死等防止対策推進法)が本年6月20日に成立し、11月1日に施行されたのに伴い、国が主催する初めてのシンポジウムが14日に厚生労働省で開かれました。(
毎日新聞WEB版・11月15日)
厚生労働省によると、2013年度に、くも膜下出血や心筋梗塞等の脳・心臓疾患で306人が労災認定され、そのうち死亡に至った人つまり過労死者は133人にも達しているそうです。ただ、これはあくまで労災認定を受けた人数ですから、実際の過労死者数はもっと多いでしょう。また、過労によりうつ病等の精神疾患になり自殺した人(過労自死者)をも含めると、さらに多くなります。
この異常な労働環境については、現実の労働現場や過労死者の遺族らからばかりでなく、国際社会からも非難を受けていて、2013年には、国連社会権規約委員会が日本政府に対して、過労死防止策を強化するよう勧告も出しています。
今回、遺族らが長年訴えてきた過労死防止法がようやく成立し、施行されたのです。
過労死防止法の目的は、「近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与すること」とされています。
そのために、過労死等の実態の調査研究、相談体制の整備、民間団体の活動支援等の対策を「国の責任で行う」と定められており、国に過労死防止の施策の策定・実施の責務が課され、地方公共団体にもそれに協力する責務が課されています。
他方、事業主に対しては、防止策への協力が求められている程度で、過重労働の防止についての事業主の具体的な責務は規定されていません。いわば事業主の自主的な取組みに任されたといえる状況で、これで本当に過労死が防止されるのか、疑問が残るところです。
また、過労死防止法が制定・施行された一方で、政府は、いわゆる
ホワイトカラー・エグゼンプションの
導入にも前向きで、労働時間規制を撤廃しようとする動きを強めています。
過労死の最も大きな原因は、長時間労働・過重業務です。過労死のケースでは、サービス残業を強いられていることも少なくありません。
労働時間規制の撤廃は、長時間労働・過重業務の歯止めを撤廃させるに等しいと言わざるをえません。
過労死防止法の制定、施行とホワイトカラー・エグゼンプションの導入は、明らかな〝矛盾〟です。
幸い最近の突然の解散風で、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を含む一連の労働法制改悪は、いったん出直しとなりました。新政権には是非、熟考願いたいと思います。(浜島将周)