緑オリーブ法律事務所ブログ

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持ち去ったのに器物損壊罪?
2014-10-22 · by blogid · in 刑事事件,
タレントのYさんが、器物損壊罪の疑いで書類送検されたとの報道がありました。(朝日新聞WEB版・10月21日
報道によると、Yさんは、6月25日午前1時頃、東京都港区六本木の路上で、20代の女性の携帯電話を持ち去った、Yさんは事件直前、女性と一緒にいた20代の男性に声をかけられ、口論になった、女性がその様子を携帯電話で動画撮影しようとしたところ、Yさんが取り上げた、とのことです。

さて、Yさんは携帯電話を壊したのではなく、持ち去ったようなのですが、それがなぜ、窃盗罪ではなく、器物損壊罪なのでしょうか?

まず、なぜ、器物損壊罪なのでしょうか?
器物損壊罪にいう「損壊」とは、物を物理的に壊すことのみをいうのではなく、その物の本来の効用を失わせることをいいます。裁判例でも、他人の飲食器に放尿した行為や、看板を取り外して空き地に投げ捨てた行為などが「損壊」とされています。
今回の事件では、携帯電話を持ち去られてしまって、女性は数日間、携帯電話を使用できなかったということで、その間の携帯電話の効用を失わせた=損壊したと判断されたのでしょう。

では、なぜ、窃盗罪ではないのでしょうか?
窃盗罪が成立するためには、単に物を持ち去っただけでは不十分で、故意とは別の主観的要素として、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用処分する意思」(不法領得の意思)が必要であるとされています。
このため、携帯電話であれば、持ち去った携帯電話を使って通話したり、売り払って代金を得たりしようと考えていたことが必要です。今回の事件では、Yさんは動画撮影されるのを嫌って、女性から携帯電話を取り上げ、持ち去ったのであって、不法領得の意思はなかった=窃盗とはいえないと判断されたのでしょう。(浜島将周)

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