大きく報道されましたが、5月21日、福井地方裁判所が、関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の運転の差止めを命じる画期的な判決を言い渡しました。
原発に関わる訴訟で、原告住民側が勝訴したことは、これまでわずかに2例しかなく(いずれも上級審で逆転敗訴)、今回の判決が3例目、しかも、2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故後、仮処分を除いて初めて言い渡された判決です。
判決理由も、かなり踏み込んでいます。
ここでは詳しくは言及しませんが、これまでの裁判所の判断と異なり、科学論・技術論を(国や事業者側の)専門家の判断に委ねず、福島原発事故の結果に正面から向き合って、裁判官自身が本当に安全だと思えるのか、真剣に考え抜いて判断したと言えます。
そのような姿勢が表れているのが、例えば、判決文中の以下のような箇所です。
・ 大飯原発においても福島原発事故のような事態を招く具体的な危険が万が一でもあるのかが判断の対象とさ れるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい。
・ 国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点から見ると、本件原発に関わる安全技術および設備は、万全でないのではないかとの疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。
・ 当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低い問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。
・ たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失と言うべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の流出であると当裁判所は考えている。
・ 原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題(CO2の削減)を原子力発電所を運転の継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。
今回の判決は、国民の生命・安全を守る観点から、極めて常識的かつ説得的な判断だと思います。
これ以上、将来世代に負の遺産を残さないよう、政府と電力会社には、原発依存政策から撤退し、早期に原発ゼロの社会を実現していただきたいと考えます。
濵嶌が所属する
愛知県弁護士会、
自由法曹団、
日本環境法律家連盟
がそれぞれ、今回の判決に対して声明を発表しました。ご覧ください。(浜島将周)