緑オリーブ法律事務所ブログ

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濵嶌が、今年度から名古屋大学法科大学院(ロースクール:弁護士・裁判官・検察官をめざす人たちの大学院)の非常勤講師(公法担当)を拝命し、1回目の講義をしてきました。

担当は憲法の講義で、テーマは「被疑者・被告人・受刑者など被収容者の人権」。ただ、ロースクールでは刑事弁護について学ぶ機会が少ないとのことで、憲法の講義でありながら、半分以上、刑事弁護のお話をしてきました。

つい最近の<PC遠隔操作事件>でもそうですが、刑事弁護人、とくに否認事件や重大事件の弁護人に対しては、「悪の味方」だと誹謗中傷が投げかけられることが多々あります。
しかし、そのような誹謗中傷は的を射ていないと思います。

裁判が確定するまでは無罪の推定が働くから「悪」と決まったわけではないということも理由のひとつですが、それだけではありません。(そうだとすると、有罪の確定した受刑者等には人権は不要になってしまいます。)

国家が恣意的に身体拘束や刑罰を科すことがあったという歴史から、近代憲法は厳格に、刑事手続の適正を求めています(日本国憲法では31条以下)。
被告人等は、国家から身体を拘束され刑罰を科されようとしている(科された)わけですから、それが適正にされているか、チェックしなければなりません。冤罪による身体拘束や刑罰が許されないのはもちろん、必要以上の身体の拘束や刑罰も許されてはならないからです。

被告人自身が罪を犯したのは間違いないとしても、犯罪に至った背景を無視して判断されるようなことがあってはいけません。
被告人の生育歴が事件に影響していることもありますし、被害者側に落ち度があることもあります。できる限り背景を明らかにすることで、その被告人自身がしっかりと罪を振り返るきっかけになり、被害者等の納得にもつながります。

被告人が有罪だと判断され、懲役刑等の刑罰が科される際には、被告人がその判断に納得できることが大切です。
被告人が刑務所に行って更生の道を歩むにも、裁判過程や判決に納得がいっているのと不満が残ったままなのとでは、刑務所生活の効果が違うでしょう。

被告人等は、たとえ有罪であっても、ほとんどの人はいずれ社会に戻ってきます。その時に、2度と同じ過ちを繰り返さないよう、新たな被害者を出さないよう、社会に溶け込めるようなケアが必要になります。
とくに執行猶予等ですぐに社会に戻る場合、帰ることのできる住居、受け入れてくれる家族、就労先や収入源などなければ、すぐに生活が立ちゆかなくなって、再び犯罪を犯す可能性が出てきます。

これらの役割を、弁護人には期待されています。無罪の可能性が高い人(「悪」ではないかもしれない人)の味方だけすればいいというわけではないのです。
それゆえ、弁護人には、国家に対峙して被告人等に寄り添うための、弁護人固有の権利(接見交通権など)も認められているのです。

そんな刑事弁護人の役割と思いを、学生のみなさんにお届けしてきたつもりです。(浜島将周)

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