緑オリーブ法律事務所ブログ

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政府税制調査会のマイナンバー(共通番号)制度活用策を検討するグループで、マイナンバーと預金口座を結びつけることが検討されている、との報道がありました。

マイナンバー制度とは、国民ひとりひとりに固有の番号を割り当て個人情報を管理する仕組みで、2014年5月に法律が成立し、2016年1月から運用されることになっています。

公平な課税や社会保障の実現のためには、マイナンバー制度が必要だと説明されています。
そのような効果があることは否定しません。しかし、例えば海外の資産・取引には日本国内のマイナンバー制度では対応できないなど、資産・取引の把握には限界があって、脱税やら生活保護の不正受給やらを抑止する効果は限定的だといわざるをえません。にもかかわらず、システム構築の初期費用だけでも数千億円、その後の維持費に年間数百億円もかかるといわれています。費用対効果が悪くて、IT・システム関係の会社のための大型公共事業に過ぎないようにも思われます。

さらに問題は、個人情報流出や悪用の危険性です。ひとつの番号で紐付けられてさまざまな個人情報が引き出せるのですから、流出してしまった場合の被害は深刻ですし、共通番号制度先進国(アメリカや北欧諸国や韓国等)では〝なりすまし〟による被害も後を絶ちません。

また、3月31日に公布されたマイナンバー法施行令では、広範囲の捜査等(まだ具体的事件の発生していない調査を含めて)のために、捜査機関等に対して、個人情報を提供できることになっています。秘密保護法の適性評価のためにマイナンバーが利用されるのでは、という危惧がありましたが、現実になってしまいそうです。

このような状況で、マイナンバーと預金口座とが結びつけられれば、さらに民間開放など利用範囲がより拡大していけば、システム構築・維持のための費用はもっと膨れ上がり、個人情報流出・悪用の危険性はもっと高まり、捜査機関等によって濫用されて国民監視の手段とされる危惧はもっと強まるでしょう。

日本弁護士連合会は一貫して、マイナンバー制度に反対してきました。
私も反対の立場から、政府主催の番号制度シンポジウムin愛知(2011年11月20日開催)において意見を述べてきました。

再来年に迫った運用開始の前に、もう一度立ち止まって再検討いただきたいと思います。(浜島将周)

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