今回も、7月20日におこなわれた参議院通常選挙のうちの都道府県選挙区(一部合区のため45選挙区)について、一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)が全国一斉提訴されました。今年は選挙翌日21日(月)が祝日でしたので、翌々日22日(火)の提訴となりました。
名古屋高裁管轄の愛知県、岐阜県、三重県の3選挙区についても提訴しました。濵嶌は名古屋高裁管轄事件の代理人を務めています。(NHK 東海 NEWS WEB・7月22日、中日新聞WEB・7月22日、朝日新聞DIGITAL・7月23日など)
従来、衆院選については3倍基準、参院選については6倍基準が、最高裁の合憲・違憲のメルクマールだといわれていました。
しかし、私たちが全国で訴訟提起し、一人一票の実現を目指し始めて以降、3倍・6倍を下回る較差であっても、最高裁は違憲状態だと判断するようになりました。
例えば、2013(平成25)年参院選(4増4減により、最大較差4.77倍に縮小)について、最高裁は、「より適切な民意の反映が可能になるよう、…都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形であらためるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法措置によって…不平等状態が解消される必要がある」と言及しました。
ところが、2016(平成28)年参院選(鳥取・島根、徳島・高知の4県2選挙区の合区を含む10増10減により、最大較差3.08倍に縮小)について、最高裁は、「参議院の創設以来初の合区を行い、数十年間にもわたり、5倍前後で推移してきた格差が縮小した」と評価し、また、平成27年改正法の付則に「平成31年参院選に向けた抜本的な見直し」が明記され、さらなる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されたとして、「違憲の問題が生じるほどの著しい不平等状態とはいえない」と、合憲と結論づけました。
以来、最高裁は、2019(令和1)年参院選、2022(令和4)年参院選と合憲判断を続けています。あたかも、参議院では、現在のおおよそ3倍基準が定着してしまったかのようです。
しかし、前回2022(令和4)年参院選について、最高裁は、「参議院議員選挙について、直ちに参院選の投票価値の平等の要請が、後退してよいと解すべき合理的理由は見いだしがたい」、「都道府県より広域の選挙区を設けるなど方策について議論されてきたところであり、こうした方策のよって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組み更に見直すことも考えられる」、「較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題というべきである」などと言明しています。
この最高裁の言葉からは、国会が較差解消の歩みを止めてしまっていることに対する強い不満が読み取れます。最高裁はおおよそ3倍基準など続けるつもりはないというべきです。
今回の選挙により、参議院でも、与党は過半数割れしました。
この選挙結果をどのように受け止めるべきかについて、いろいろ評価はおありでしょうが、選挙戦で争点にならなかったとしても、まず取り組むべきは、衆参両院の選挙制度・選挙区割りの改定=一人一票の実現、一票の格差の解消のはずです。(浜島将周)
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