緑オリーブ法律事務所ブログ

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 大学の研究者と測量会社の技師を兼業していた男性が自殺したのは二つの職場での心理的な負担が重なったのが原因だとして、負担を総合的に判断して、労災認定された事例が報道されました。(朝日新聞DIGITAL・12月16日NHK NEWS WEB・12月16日


 2020年の改正労災保険法により、副業・兼業を行う労働者が労働災害に遭った場合について、
・ 保険給付の算定にあたって、すべての就業先から得られた賃金を合算して保険給付を行うこと(賃金合算)
・ 副業・兼業を行う労働者が脳・心臓疾患や精神障害に罹患した場合に、すべての就労先における負荷を合算して労災認定を行うこと(負荷合算)
が、それぞれできるようになっていました。
 改正規定の詳細は、厚労省作成の資料をご覧ください。→こちら


 厚労省によると、この運用を適用し、2023年度までに17件が労災認定されました。うち4件が死亡事案で、いずれも脳や心臓の疾患によるものでした。今回の労災認定は、過労自殺への初適用例のようです。


 報道によると、本件男性は、大学の研究員と測量会社の技師を兼業していましたが、精神障害を発症し、自死しました。大学では准教授からパワーハラスメントを受け、測量会社では橋梁調査の業務全般を一人で担当するなどしていました。
 労基署は、それぞれの職場での心理的負荷強度は「中」だったが、総合的に検討すれば「強」に当たると指摘し、「複数業務を要因とする災害」として労災認定しました。


 副業・兼業を認める企業も増えてきて、珍しいことではなくなっています。ある従業員について、複数の職場から生じる心理的負荷の強度、蓄積を、それぞれの職場がどのように把握し、健康管理することができるか、難しい問題ですが、検討が必要です。(浜島将周)



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