緑オリーブ法律事務所ブログ

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 年々増えているといわれる「相続放棄」ですが、司法統計によると、2022年は全国の家庭裁判所で過去最多の26万0497件が受理されたそうです。(中日新聞WEB版・4月9日


 人が死亡すると「相続」が開始します(民法882条)。そして、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すします(民法896条)。ですので、相続人は、被相続人が残した不動産や預貯金などプラスの遺産ばかりでなく、借金やローン、保証債務といったマイナスの遺産も引き継がなければならなくなります。
 当たり前ですが、プラスしかなかったりプラスの方が多かったりなら、引き継いだ方が得ですが、マイナスしかなかったりマイナスの方が多かったりなら、引き継ぐのは損です。たとえ夫や親といっても他人のマイナスを、ある日突然引き継がなければならなくなるのは酷でしょう。また、プラスの方が多くても、例えば被相続人と疎遠だったりして、引き継ぐことがためらわれることもあるでしょう。
 そういう場合に、相続人は、家庭裁判所に申し出て(「申述」といいます)、遺産を引き継がないという手続=相続放棄をすることができます(民法938条)。相続の放棄をすると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。


 被相続人が負債を抱えていたケースばかりでなく、例えば地方で暮らす親が亡くなり、離れて暮らす子が残された実家が売却困難だ、維持・管理にも費用がかかるなどとして相続を嫌がるケースなどもあって、相続放棄は増加傾向のようです。
 相続放棄の結果、地方の実家が放置されてしまうと、倒壊等の危険も発生します。そういう場合、最終的には行政が代執行して取り壊すこともありますが、当該自治体の負担となってしまいます。
 また、相続放棄とは別に、土地所有権を放棄して国に受け取ってもらう制度(相続土地国庫帰属制度)が新設されましたが(当ブログ2022年6月3日「所有者不明土地問題の解消のための民法等の改正について(その4)」)、更地でなければならないなどハードルはかなり高いので、やはり利用は広がっていないようです。
 さらなる法的手当が必要に思います。


 なお、相続放棄については、相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないこと(民法915条。案外短くて気づいたときには放棄できないおそれがあります。)、相続人が遺産の全部または一部を処分したときは放棄ができなくなること(民法921条。例えば預貯金で何かしら支払ってしまった後では放棄できないおそれがあります。)などの制限があります。また、ある相続人が相続放棄をすると、他の相続人の相続分(マイナスなら負担)が増えたり、次順位の相続人に回ってきたりすることにも注意が必要です。
 当事務所では、相続放棄のご相談・受任対応もしております。お気軽にお問合せください。(浜島将周)


 


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