日本弁護士連合会が、提訴等の手数料を引き下げるべきだとする提言を発表し、2月1日付で内閣総理大臣等に提出しました。(2024年1月18日「より利用しやすい民事司法とITの時代に即応した提訴手数料等の在り方に関する立法に向けた提言」)
訴訟を提起したり調停を申し立てたりするときには、手数料がかかり、その金額を収入印紙によって裁判所に納めます。(ほかに予納郵券(郵便切手)を納めます。)
手数料の金額は、「訴訟物の価額」・「調停事項の価額」という、原告・申立人が求める経済的利益を基準にして決まります。
例えば、民事訴訟第一審で被告に10万円を請求する訴訟なら1000円、100万円なら1万円、1000万円なら5万円、1億円なら32万円と定められています。
控訴や上告に際してもその都度新たに手数料がかかり、控訴審なら上記金額の1.5倍、上告審なら2倍と定められています。
他方、民事調停の手数料は、上記金額の半分と定められています。
詳しくは、裁判所ウェブサイトの「手数料額早見表」をご覧ください。
日弁連は、手数料のために提訴や上訴を諦めたり、請求額を減額したりする事例が見られ、国民の裁判を受ける権利を侵害しかねないなどとして、
①提訴手数料に上限を設けること
②控訴手数料を提訴手数料と同額に引き下げること
③上告手数料を提訴手数料の1.5倍に引き下げること
を求めています。
手数料が低額化すれば、提訴や上訴がしやすくなりますから、国民の裁判を受ける権利にとってはよいことです。
ただ、あまりに低額化すれば、悪意や不当な目的をもった訴訟(「濫訴」)が増え、それに巻き込まれてしまう危険性も高まります。そういったことに裁判所の人的資源や予算(税金)が使われてしまうのも不公平です。
その意味では、手数料の適正化は議論の余地があります。
ちなみに、離婚や遺産分割等の家事調停や審判の手数料は、1200円と800円というふたつの手数料体系が軸となっていて、非常に低額に抑えられています。家族・親族内の問題解決については、裁判所を利用しやすくすることを優先したわけです。(浜島将周)
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