とある工場建屋を賃借したというご相談者から、「工場建屋の出入口にトラックを横付けして資材の搬入作業をしていたら、貸主から、「敷地は賃貸借契約の範囲外だから、敷地を使うなら別途、地代を払ってほしい」と言われたが、そういうものか」というご相談を受けたことがありました。
建物賃借人が、敷地を一切利用せずに建物だけを利用することは、ほぼ不可能です。建物に出入りするにも、多少なりとも敷地を通らざるを得ません。ですから、一般的には、「住宅に使用するための家屋の賃貸借において、その家屋に居住し、これを利用するため必要な限度で、その敷地の通常の方法による使用が随伴することは当然である」(東京高判S34.4.23.)とされています。したがって、建物の賃貸借契約書に敷地利用権の記載がなくても、「建物の通常の利用に必要な範囲内での敷地の通常の方法による使用」は、建物の賃借権に含まれています。
もっとも、どの程度の敷地利用なら、「建物の通常の利用に必要な範囲内での敷地の通常の方法による使用」といえるか?は、ケース・バイ・ケースというほかありません。契約の目的、賃料の額、建物・敷地の位置関係・形状・広さ、賃借人の利用方法とそれに対する賃貸人の対応などの諸事情を総合考慮して判断されます。
住宅の賃借についていえば、建物貸借契約によって、その住宅を取り囲む敷地を庭や自家用車の駐車スペースに利用する程度のことなら、問題ないでしょう。もちろん、敷地が広大で、一般の住宅の庭といえる広さを超える大庭園になる場合、家族分を超える台数が駐められる大駐車場になる場合には、賃料の額との兼ね合いが問題になります。
本件のような工場建屋の賃借についていえば、もちろん諸事情によるものの、工場建屋であることから、通常は建物貸借契約時において、資材・製品の搬入・搬出は予定されており、敷地内に車両が進入し、駐車されることも予定されていたというべきだろうと思われます。(浜島将周)
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