緑オリーブ法律事務所ブログ

緑オリーブ法律事務所ブログ

 昨年7月の参議院通常選挙に関する「一人一票実現」訴訟(いわゆる「一票の格差」訴訟)について、昨日、最高裁判所の判決が言い渡され、報道各社も大きく取り上げました。(NHK NEWS WEB・10月18日朝日新聞DIGITAL・10月18日日経新聞Web・10月18日など)


 先々回、先回と参院選に関して最高裁が合憲判断を続けていたものの、先回の最高裁は、「参議院選挙制度の改革の実現は漸進的にならざるを得ない」ことから、「立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできない」とも述べていて、国会が制度改革の努力を続けることを前提とした留保付き判決でしたし(2020年11月19日「一人一票実現訴訟 最高裁判決(2019年参院選)」)、今回の参院選に関する各地の高裁判決では違憲状態判断も目立ちましたので(2022年10月26日「一人一票実現訴訟 名古屋高裁判決(2022年参院選)」)、一歩踏み込むことが期待されました。しかし、3回連続の合憲判断でした。


 今回、最高裁(多数意見)は、合区の導入などで最大格差は3倍程度で推移し、格差が拡大傾向にあるとはいえないとし、また、国会で都道府県より広域の選挙区を設けるなどの議論がされていること、選挙制度改革には国民の理解を得る必要があり、一定の時間が必要であることなどを指摘して、違憲の問題が生じるほどの著しい不平等状態にあったとは言えないとして、合憲判断をしました。


 他方で、最高裁は、「立法府には格差のさらなる是正を図り、再拡大させない取り組みが引き続き求められる」とし、その上で「法改正の見通しが立たず具体的な検討が進展しているとも言い難い」と是正の遅れも指摘しており、やはり今回も留保付き合憲判決だとみるべきです。


 とはいえ、結果的に最大3倍に達している較差を3回続けて容認したことになり、国会が参院選の一票の格差の合憲・違憲の判断基準を3倍と捉え、その程度の較差の固定化を招きかねないことが懸念されます。中日新聞に私のコメントを掲載していただきましたが、このような意味で申し上げました。
 3倍の較差があるということは、実質的には1/3票=0.33票しか持たない有権者の存在を認めることになります。それが許される理屈はどこにも見いだせません。


 最高裁は何度も留保付き判決を続けるだけで、国会に甘すぎるとは思うのですが(なので、違憲・将来無効判断の宇賀克也判事の反対意見が正しいと思うのですが。)、とにかく、国会は「参院選は3倍基準だ」などと考えることなく、制度改革の努力を続けなければなりません。(浜島将周)



― 緑オリーブ法律事務所は名古屋市緑区・天白区・豊明市・東郷町を中心にみなさまの身近なトラブル解決をサポートする弁護士の事務所です ―

  • <
  • 1
  • >