客がクレジットカードで購入した天然石の代金の払い戻しを装って現金を貸し付け、違法な利息を受け取ったとして、出資法違反(高金利)の疑いで、4人が逮捕されたとの報道がありました。(東京新聞Web・5月23日)
〝カード現金化〟といわれる方法で、2016年以降、全国の約3万人に約106億円を貸し付け、約26億円もの利益を不当に得たとみられるとのことです。
今回の事件は、もともとさほど高価でない天然石を高価で販売したことにし、その代金(販売価額よりもかなり低額)を払い戻したことにして、現金を貸し付けた(その差額が利息となる)というのですから、現金を渡した側が罪に問われました。
しかし、例えば新幹線の回数券をクレジットカードで購入し、それを金券ショップに持ち込んで、購入額から数%割り引いた額で買い取ってもらって現金を得るというように、現金を渡した側が罪に問われそうにない状況もあります。
いずれにしても、現金を受け取った側についていうと、カード現金化は、消費者金融からの借入がかさみ、限度額いっぱいになってしまってもう借りられないとなったときに、現金を得る最後の手段としてされることが多いようです。
街でもときどき「カード現金化」の広告を目にしますから、安易にされる方もいらっしゃるのですが、絶対にやめてください。
第一に、そもそもカード現金化は、一時しのぎにはなるのでしょうが、現金を渡した側が罪に問われそうにない状況でも、程度の差はあれ手にした現金よりも債務額の方が大きいことに変わりはありませんから、債務総額を増やし、返済状況を悪化させることになります。
第二に、カード現金化をすると、自己破産できなくなる(正確には、免責が受けられなくなる)可能性があります。
自己破産手続では、原則として免責(債務の支払義務の免除)が許可されない免責不許可事由が定められています(破産法252条1項に「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。」として、11類型が挙げられています。詳しくは、当ブログ2016年8月18日「「免責不許可事由」とは」参照)。
まず、クレジットカードで物品を購入し、それを低額で売却して現金化したとなれば、同条項2号の、「破産手続の開始を遅延させる目的で、…信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」に該当する可能性があります。
また、もう消費者金融から普通に借りることができなくなったような方がされることが多いので、同条項5号の、「破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと」に該当する可能性もあります。
もっとも、カード現金化をしてしまったとしても、直ちに免責が認められないことが確定してしまうわけではありません。
破産法252条2項では、「前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」とされています。
つまり、その行為の悪質さの程度や、債務を負った理由、現在の生活や収入の状況等のさまざまな事情も考えた上で、裁判官が総合的に考慮して、債務者の立ち直りのために、免責を認める場合もあるのです。これを「裁量免責」といいます。
実際には、債務者に反省文を書かせる、裁判官が個別に面接してお灸を据える、破産管財人を選任して破産者が真面目に節約生活が送れるかしばらく観察させる、などして債務者の反省を促し、様子を見て、最終的には免責を認める場合がほとんどです。
さらに状況を悪化させる前に、弁護士のところに債務のご相談にいらしてください。(浜島将周)
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