山口県が公用車としてトヨタ自動車の最高級セダン「センチュリー」を購入したのは、違法な公金の支出だとして、元県職員である住民が県に対し、購入費2090万円の賠償を村岡嗣政知事に対して請求するよう求めた訴訟において、第一審山口地裁は購入を違法として全額の賠償請求を命じる判決を下していましたが(2022年11月4日「県の貴賓車「センチュリー」購入は違法…知事に2090万円全額の支払いを命じる判決」)、控訴審広島高裁は5月10日、購入を適法と認める判決を下しました。(朝日新聞DIGITAL・5月10日、NHK 山口 NEWS WEB・5月10日等)
山口地裁は、他の車種との比較など歳出を削減するための検討が「あまりに不十分だった」と指摘して、購入契約が裁量権を逸脱、乱用していて財務会計上違法だと判断していました。
これに対し、広島高裁判決は、購入代金が「高額である感は否めないが、不当に高額とも認められない」とし、「皇室や外国の要人に最大限の敬意を示し、安心安全な送迎を期する」という目的は「相当と認められる」、他の車種は検討されなかったものの、「長年、センチュリーを使用してきた実績からすれば、その判断にも合理性が認められる」として、購入契約、支出の違法性を否定しました。
地方公共団体が事務を処理するに当っては、最少の経費で最大の効果を挙げることが求められています(地方自治法2条14項)。山口地裁は、センチュリーの購入が、県民のためにいかなる効果があったかを、厳しく(というより、住民の素朴な常識に沿って)判断したといえますが、広島高裁は、行政の裁量の範囲内だと判断しました。原告側は上告するようですので、最高裁の判断に注目したいと思います。(浜島将周)
<10.10.追記>
最高裁が10月4日、原告側の上告を棄却し、県の逆転勝訴とした二審・広島高裁の判決が確定しました。(朝日新聞DIGITAL・10月6日、NHK 山口 NEWS WEB・10月6日)
なお、最高裁の決定は、上告理由にあたる憲法違反などがないというだけのもので、内容には立ち入らないままの判断のようです。
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