昨年2022年12月に成立した親子法の一部を改正する改正民法のご紹介、連載5回目です。
これまでご説明してきたとおり、嫡出推定を覆すためには、「嫡出否認の訴え」によらなければならないのですが、現行民法上、この訴えは父親(夫)しか提起することができず(母親(妻)や子どもは提起することができない。)、しかも、提訴期間は、父親(夫)が子の出生を知った時から1年以内に限られていました。これが〝離婚後300日問題〟、さらに〝無戸籍問題〟の原因のひとつになっていたため、改正民法では、嫡出否認制度が見直されました。
1.父の否認権
・ 子または親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによる。
・ 出訴期間は「父が子の出生を知った時」から3年に延長。
2.子の否認権
・ 子は、父に対して、嫡出否認の訴えを提起できる。
・ 当該否認権は、親権を行う母、親権を行う養親または未成年後見人が、子のために行使することが可能(否認権行使にあたっては、子の利益に反してすることができない。)。
・ 出訴期間は「子の出生の時」から3年が原則。
3.母の否認権
・ 母は、父に対して、嫡出否認の訴えを提起できる。
・ ただし、その否認権行使が子の利益を害することが明らかな場合は、この限りではない。
・ 出訴期間は「子の出生の時」から3年。
4.前夫の否認権
・ 子の懐胎から出生までの間に母と婚姻していた者であって、子の父以外の者(前夫)は、父および子または親権を行う母に対して、嫡出否認の訴えを提起できる。
・ ただし、その否認権行使が子の利益を害することが明らかな場合は、この限りではない。
・ 出訴期間は「前夫が子の出生を知った時」から3年。ただし、子が成年に達した場合はできない。
・ 後婚の夫について推定が否定された場合(→前夫の子と推定される。)、各否認権者はそれぞれ「当該嫡出否認の裁判が確定したことを知った時」から1年以内に嫡出否認の訴えを提起しなければならない(前夫には、手続保障の観点から、嫡出否認の判決内容等が通知される。)。
5.子自身による否認権行使
・ 子は、父と継続して同居した期間(当該機関が二以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、21歳に達するまでの間、嫡出否認の訴えを提起できる。
・ ただし、子の否認権行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、この限りではない。(浜島将周)
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