遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高になった、との報道がありました。身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産が10年前の2倍、20年前の6倍に増えたのだそうです。(朝日新聞DIGITAL・1月23日)
相続人が不存在の場合や相続人の存在・不存在が明らかでない場合で、遺言書もなければ(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含む。)、家庭裁判所が、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者(※)など)からの申立により、「相続財産管理人」を選任します。
相続財産管理人は、被相続人の債権者らに対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後最終的に残った財産を国庫に帰属させることになります。国庫帰属に先立ち、特別縁故者(※)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。
相続財産管理人が選任された後の手続は、おおよそ以下のとおりです。
なお、途中で相続財産が無くなった場合は、そこで手続は終了します。
① 家庭裁判所は、利害関係人(まれに検察官)からの申立により、相続財産管理人選任の審判をしたときは、相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をする。
② 相続財産管理人は、①の公告から2か月が経過してから、相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をする。
③ 家庭裁判所は、②の公告から2か月が経過してから、相続財産管理人の申立により、相続人を捜すため、6か月以上の期間を定めて公告をする。
期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定する。
④ ③の公告の期間満了後3か月以内に、特別縁故者(※)に対する相続財産分与の申立がされることがある。
⑤ 相続財産管理人は、必要があれば、随時、家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株を売却し、金銭に換えることができる。
その上で、相続財産管理人は、法律にしたがって債権者や受遺者に支払をしたり、特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与したりする。
⑥ 以上の手続を経て、なお相続財産が残った場合、相続財産管理人は、相続財産を国庫に引き継ぐ。
(※)特別縁故者
相続人ではないものの、被相続人と特別な縁故(かかわり)がある人のことで、相続人や包括受遺者がいない場合に、当人からの申立により(申立ができる期間は、上記④のとおり、③の公告の期間満了後、3か月以内と決められていますので、ご注意ください。)、相続財産の一部または全部が分与されることがあります。
例えば、内縁の夫・妻、事実上の養子、療養看護をしてきた人などが特別縁故者になり得ます。
なお、被相続人との財産の共有者は、相続人や包括受遺者、さらに特別縁故者がおらず、相続債権者や特定受遺者への清算を行ってもなお、その共有財産の持分が残っている場合、その持分を取得することができます。
被相続人にお金を貸していたなどの理由から相続財産管理人選任申立をしたいとお考えの方や、相続人ではないが被相続人を長年療養看護してきたなどの理由から特別縁故者に対する相続財産分与の申立をしたいとお考えの方など、申立手続に期限があったり、さまざまな資料が必要で手続も煩雑だったりしますので、ご注意ください。
また、相続人がいなければ、遺産は最終的には国庫に帰属してしまいますので、例えば、身寄りの無い子どもたちの施設に寄付したいなどのご希望がおありなら、遺言書を残されておくとよいです。
一度、弁護士にご相談ください。(浜島将周)
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