緑オリーブ法律事務所ブログ

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 昨年のことですが、当職が成年後見人を務めていた被後見人の女性がお亡くなりになりました。


 成年後見人の職務は、大きくは被後見人の財産管理と身上監護ですが、被後見人が亡くなると、法律上は、その時点で成年後見は終了し、成年後見人の代理権も消滅します。
 すなわち、被後見人の財産に関する相続手続について、成年後見人はなんらかかわることができません。成年後見人としては、速やかに後見終了の手続きをし、相続人に財産を引き継ぎます。


 具体的には、被後見人が亡くなった後の事務は、
1. 相続人を調査する。
2. 財産目録と収支計算書を作成し、相続人に交付する。
3. 法務局に後見終了登記を申請する。
4. 相続人に財産を引き継いで、引継書を受領する。
5. 家庭裁判所に引継報告、後見事務終了報告を行う。
で終了します。


 この財産の引継ぎについて、相続人がお一人であれば、その方に引き継げば済みます。


 相続人が複数いらっしゃっても、相続人間ですぐに遺産分割協議が調えば、それに従って引き継げばよいのですが、なかなかスムーズにいかないこともあります。そのようなときは、代表者お一人に対して引き継いでしまうことが一般的です(全相続人と連絡をとって、代表者お一人を定めていただきます。)。


 逆に被後見人に相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄をされた場合には、財産を引き継ぐ相手がいないため、家庭裁判所に「相続財産管理人」選任を申し立て、裁判所から選任された相続財産管理人に財産を引き継ぎます。(相続財産管理人については、当ブログの「遺産の相続人がいないとき」をご覧ください。) 
 相続人が複数いる場合であっても、相続人間でもめて代表者が決められない場合や、相続人と連絡が取れない場合など、引継ぎに困難な事情があるときにも、相続財産管理人を選任してもらうことがあります。


 相続人が行方不明の場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」選任を申し立て、裁判所から選任された不在者財産管理人に財産を引き継ぎます。


 このように相続手続は成年後見人の業務ではありません。預金の払戻しや分配は、成年後見人でなく、成年後見人から引き継いだ相続人(あるいは相続財産管理人ら)が行います。
 また、ご遺体の引き取りやご葬儀を行うなどの死後の手続きも、原則としてご親族にしていただかなければなりません。
 ただし、一部の死後事務については、成年後見人が行うことが認められています(民法873条の2)。
① 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
② 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
③ 本人の死体の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(上記①②の行為を除く。)
 このうち③に該当する行為をするには、家庭裁判所の許可が必要になります。


 成年後見について、ときどき相続手続まで成年後見人がしてくれるものだとお考えの相続人がいらっしゃって、相続手続きが手間な場合に、別の弁護士に相談・依頼しないといけないと知って、がっかりされることがあるのですが、以上のようになっていますので、お気をつけください。(浜島将周)


 


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