所有者不明土地問題の解消のためのもうひとつの施策の柱、既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化の方策として、③土地利用に関連する民法の規律の見直しがなされました。今回は、民法のその他の改正のうち、長期間経過後の遺産分割の新たなルールの導入についてのご説明です。
※参照 『所有者不明土地ガイドブック~迷子の土地を出さないために!~』(令和4(2022)年3月 国土交通省)
【長期間経過後の遺産分割の新たなルールの導入】(令和5年4月1日施行)
―遺産分割長期未了状態の土地の解消を促進
相続が発生したにもかかわらず、土地や建物、動産、預金等の遺産(相続財産)について遺産分割がされないまま長期間放置されると、その間に相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となり、その一部が所在不明になるなどして、所有者不明土地が発生することが少なくありません。
しかし、遺産分割の際には、法律で定められた相続分(法定相続分)等を基礎としつつ、個別の事情を考慮した具体的相続分を算定するのが一般的ですが、具体的相続分による遺産分割を求めることには時的制限がなかったため、相続人が早期に遺産分割の請求をすることについてインセンティブが働きにくかったところです。また、遺産が分割されないまま長期間が経過すると、生前贈与や寄与分に関する書証等が散逸し、関係者の記憶も薄れることから、具体的相続分の算定が困難になり、遺産分割の支障となるおそれがありました。
そこで、法改正により、被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分ではなく、法定相続分(または指定相続分)によることとするルールが新たに設けられました。
これにより、相続人が具体的相続分による遺産分割を求める場合には、基本的に10年が経過する前に遺産分割の請求をする必要があることとなりました。
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