山口県が公用車としてトヨタ自動車の最高級セダン「センチュリー」を購入したのは、違法な公金の支出だとして、元県職員である住民が県に対し、購入費2090万円の賠償を村岡嗣政知事に対して請求するよう求めた訴訟で、山口地裁が全額の賠償請求を命じる判決を下しました。(毎日新聞Web・11月2日、NHK NEWS WEB・11月2日等)
報道によると、県は、もともとセンチュリー3台を保有していたところ、老朽化や経費削減のため、2020年、うち2台を下取りに出して、皇族や海外の賓客らの送迎用として、新たに1台のセンチュリーを購入し、現在は2台が「貴賓車」となっています。
2090万円という価格は、徳島県の公用車に次いで全国で2番目に高額とされています。
また、新しいセンチュリーが外国の要人や皇族の送迎に利用されたのは6日間のみで、実際にはほぼ県議会議長が利用してきました。
この点、判決は、県がセンチュリー購入を決定したことは知事の裁量権の範囲を逸脱し、財務会計上の違法行為だと認定しました。そして、知事には、県職員を指揮・監督して購入決定という違法行為を阻止するべき義務があったのに違反した過失があると判断しました。
判決は、県の2020年度当初の財源不足見込み額が276億円に上っていたのに、歳出削減の観点から新たなセンチュリーの購入が必要かどうか、価格が安い他の車種を選ぶべきかどうかの検討があまりにも不十分だったと指摘しています。
また判決は、他の車種で賄えないわけではなく、宮内庁が各都道府県に車種の希望を伝えたこともないとして、皇室対応の車両がセンチュリーであるべき必要がどの程度あるのか、明らかではないとも批判しています。
「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」(地方自治法2条14項)
センチュリーの購入が、県民のためにいかなる効果があったかを、厳しく(というより、住民の素朴な常識に沿って)判断した判決だといえると思います。(浜島将周)
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