緑オリーブ法律事務所ブログ

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 今年7月10日に行われた参議院通常選挙に関する一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)について、昨日、濵嶌も原告代理人を務めた名古屋高裁訴訟の判決がありました。(NHK NEWS WEB・10月25日メ~テレ・10月25日中日新聞WEB・10月26日読売新聞ONLINE・10月25日など)


 10月14日の大阪高裁、10月18日の東京高裁と、国会の参議院の一票の較差是正(選挙制度改革)に対する取組みが不十分であることなどから、違憲状態判断をしていましたが、名古屋高裁は合憲判断でした。


 名古屋高裁は、
・ 今回の選挙当時の一票の最大較差は3.03倍であり、3年前の令和元年の選挙当時の3.00倍と比較すればわずかに格差が大きくなったが、格差を是正する公職選挙法改正前の平成28年の選挙の3.08倍よりはわずかながら縮小させていること
・ 合区の解消を望む声も多い中で、合区を維持していること
から、数十年にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を縮小させた平成27年改正法の方向性を維持している。


・ 二院制を採用した趣旨
・ 参議院の特殊性
・ 都道府県選挙区を採用した趣旨
などから、参議院の選挙制度改革には、事柄の性質上慎重な考慮を要する。


・ 参議院協議会や参議院憲法審査会での議論が継続している
から、国会が、未だ、較差是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできない。


などとして、違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあったとはいえないと、合憲判断をしました。


 参議院の特殊性や都道府県選挙区といった議論は、それが一人一票の原則を破る理由にならないことは、すでに最高裁が言明しています。
 合区を維持したことや最大較差が3.03倍であることをむしろ積極的に評価したことは、抜本的な選挙制度改革を呼びかけた最高裁判決の流れにそぐわないものです。
 参議院協議会や参議院憲法審査会が開かれていることはそのとおりですが、特段具体的な議論が進んでいるわけではなく、ただ会議が開かれているだけの状態です。


 私たち弁護士グループは、名古屋高裁が、国会が「未だ、較差是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできない」として、現時点でも較差是正が不十分であることは認めた(その意味で、現在の国会議員が適正な選挙を経て当選したわけではない、正統性に疑問がある、とは認めた。)という限りで、本判決を前向きに捉えますが、全体としては、議論を20年前に後退させており、評価できないと考え、即日、上告しました。


 今回の名古屋高裁判決は、私たち弁護士グループが全国14の高裁・高裁支部に一斉提訴したうちの3番目の判決でした。全14高裁判決をまとめていずれ出される最高裁の判断にも、是非ご注目ください。(浜島将周)



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