今回も、一昨日7月10日の参議院通常選挙のうちの都道府県選挙区(一部合区のため45選挙区)について、選挙翌日の昨日11日、一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)が全国一斉提訴されました。(NHK NEWS WEB・7月11日、朝日新聞DIGITAL・7月11日など)
名古屋高裁管轄の愛知県・岐阜県・三重県の3選挙区についても提訴し(濵嶌は名古屋高裁管轄事件の代理人を務めています。)、夕方のニュースにもなりました。(NHK東海 NEWS WEB・7月11日、東海テレビWEB・7月11日など)
私たちが全国で訴訟提起を始めてから、今回が5度目の参院選になります。
過去4回、最高裁判所は、最大格差が5倍程度あった2010(平成22)年の参院選と、定数を4増4減して4.77倍となった2013(平成25)年の参院選については「違憲状態」と判断した一方で、鳥取・島根と徳島・高知の4県2選挙区の合区を含む10増10減により3倍程度となった2016(平成28)年の参院選と、埼玉県選挙区を2増してやはり3倍程度であった前回2019(平成1)年の参院選については「合憲」と判断しました。
今回も較差は3倍程度ですので、当然「合憲」だろう、というご意見もあるでしょう。
しかし、私たちが主張する一人一票の実現の観点からすれば、まだ3倍=一人0.33票もの格差があります。したがって、当然に憲法に違反していると考えます。
また、最高裁の2016年・2019年各参院選についての「合憲」判決は、「参議院の創設以来初の合区を行い、数十年間にもわたり、5倍前後で推移してきた格差が縮小し」、公選法改正法付則に「平成31年参院選に向けた抜本的な見直し」が明記され、さらなる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されれていること(2016年参院選)、あるいは、国会内には参院選改革に関する見解の隔たりが大きく、合区の解消を強く望む意見がある中での定数2増は、「格差是正の方向性を維持するよう配慮したといえる」こと(2019年参院選)を理由としていました。いわば、国会の努力を評価・期待しての条件付き合憲でした。ところが、今回の参院選については、何らの是正もされないどころか、国会での議論もないままで、国会が努力をやめた状態で迎えました。であれば、最高裁の理屈に従っても、「違憲(状態)」判決となるはずです。
ところで、いわゆる改憲勢力が衆参ともに2/3超の議席を占めたことで、国会では改憲議論が加速するといわれており、岸田文雄首相も、「できる限り早く発議に至る取り組みを進める」と決意表明されたようです。
しかし、一人一票が実現しておらず、投票価値の較差是正がなされていない選挙で選出された国会議員は、国会活動をする憲法上の正統性のない議員です。そのような議員が、憲法96条の改憲発議をすることは、憲法は予定していないでしょう。
改憲議論の前にまず取り組むべきは、これまで何度も問題を指摘され続けている、衆参両院の選挙制度や区割りの改定=一人一票の実現、一票の格差の解消でなければなりません。
全国の高裁、さらに最高裁の判断にご注目ください。(浜島将周)