緑オリーブ法律事務所ブログ

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 海外に住む日本人が最高裁判所裁判官の国民審査に投票できないのは憲法に反するとして、在外邦人らが国に損害賠償等を求めた訴訟で、最高裁大法廷が、投票を認めていない国民審査法は「違憲」だとする判決を言い渡しました。
 最高裁が個別の法令を違憲と判断するのはこれまで10例しかなく、大きく報道されました。(NHK NEWS WEB・5月25日毎日新聞Web・5月25日朝日新聞DIGITAL・5月25日など)


 原告らは、国民審査は最高裁裁判官への民主的統制のための権利だ、と在外邦人にこれを認めないことの不当性を訴えていました。
 これに対し、被告(国)は、国民審査は議員を選ぶ選挙権とは重要性が異なる、裁判官の名前を印刷した投票用紙を世界中に送って投票日に間に合わせることも困難だ、と反論していました。


 最高裁は、1、2審に続き、在外邦人の投票を制限している国民審査法が、公務員の選定・罷免権を保障した憲法15条に違反するとの初判断を示しました。
 また、必要な法律を整備してこなかった国会の「立法不作為」の責任も認め、国に原告1人あたり5000円の賠償を命じました。
 さらに、海外在住の原告が次回の審査でも投票できないのは違法とも認めました。
 15人の裁判官の全員一致の意見です。いずれも画期的で、国会は速やかな法改正を迫られました。


 ところで、現行の国民審査は、罷免すべきだと思う裁判官に×印をつけて投票し、×が有効票の半数を超えると罷免されることになっていています。過去に罷免された例はなく、×の割合はおしなべて数%にとどまっています。原告らのいう「最高裁裁判官への民主的統制」として実効性のあるものといえるか、疑問なしとしません。
 そもそも最高裁裁判官の良し悪しを国民が判断する材料も乏しいので仕方ない面はあるにせよ、せめて信任には○、不信任には×、判断できなければ無印という投票ができるくらいに制度を改定しなければ、意味ある投票にならないように思います。(浜島将周)



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