緑オリーブ法律事務所ブログ

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 昨年10月31日に行われた衆議院総選挙に関する一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)について、昨日、濵嶌も原告ら代理人を務めた名古屋高裁訴訟の判決がありました。(NHK NEWS WEB・2月16日名古屋テレビ・2月16日中日新聞Web・2月16日日経新聞Web・2月16日など)


 名古屋高裁は、最大較差が2.079倍に達していること、較差2倍超が29選挙区に上っていることから、選挙制度にかかる国会の裁量権の範囲を逸脱しており、投票価値の平等に反する、としました。
 ただし、いわゆる合理的期間論により、違憲無効とはしませんでした。(違憲状態判決)


 今回の名古屋高裁判決は、私たち弁護士グループが全国14の高裁・高裁支部に一斉提訴したうちの10番目の判決なのですが、「合憲」判断が5つ、「違憲状態」判断が5つと割れています。
 これは、最大較差が「2倍を少し超えた程度に過ぎない」とみるか、「2倍を超えてしまっている」とみるかの違いのほか、2016年の法改正で「アダムズ方式」と呼ばれる新たな区割りの導入が決まり、次回総選挙には2倍未満となっているであろうという将来の事情や国会の努力を評価するか否かの違いによります。
 そもそも、私たちは「一人一票」の実現を目指すべきだと訴えており、最大較差2倍=一人0.5票の存在もおかしいと考えますので、2倍超など論外です。また、将来の(不確かな)事情を考慮して過去の憲法違反に目をつむるというのは、まったく理屈になっていないと考えます。この点は、今回の名古屋高裁も、区割り改訂の予定については、本件選挙時の合憲性に影響しない、と明言しました。


 なお、「違憲状態」判決とはいえ、現状を容認した判決には変わりありませんから、私たちは即日、上告しました。


 全14高裁判決をまとめて、早ければ年内にも出されるであろう最高裁の判断にも、是非ご注目ください。(浜島将周)



<2.18.追記>
 判決翌日の中日新聞は、弁護士グループの写真付きで、大きく報道してくれました。
・ 中日新聞2月16日「名古屋高裁、2倍超の結果重視 衆院選一票の格差「違憲状態」



 また、日本経済新聞は、「10増10減」の実行を求める社説を掲載しました。2021年12月9日にも「10増10減」の実行を求める社説を掲載していました。短期間で繰り返し同旨の社説を掲載することは珍しいのではないかと思います。
・ 日経新聞2月17日「[社説]「10増10減」の見送りは論外だ
(引用)
「世界的に民主主義のあり方が問われる中、投票価値の平等に疑念が生じれば、代議制民主主義の正統性を揺るがしかねない。自民党はこうした危機感を持つべきだ。
 アダムズ方式は最高裁が3度にわたり廃止を求めた「1人別枠」方式に代わるものだ。各県にまず1議席配分していたのをやめ、より人口比例に近い形で定期的に格差を是正する。投票価値の平等に重きを置く米欧の価値観に近づいたという意義がある。
 昨年の衆院選の1票の格差訴訟で高裁判断は割れているが、合憲とした高裁も次の衆院選がアダムズ方式で是正されることを前提とした判断が目立つ。10増10減が見送られれば、年内にも予定される最高裁の判断に影響を与えよう。」
・ 日経新聞2021年12月9日「[社説]「10増10減」の実行を確実に



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