緑オリーブ法律事務所ブログ

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 マンション建設の反対運動中、現場責任者に暴行したとして逮捕、起訴され、その後無罪が確定した名古屋市の男性が、警察が保管しているDNA型や指紋、顔写真等のデータの抹消等を国に求めた訴訟の判決で、名古屋地裁がデータの抹消を命じたことが大きく報道されました。(中日新聞WEB・1月18日朝日新聞DIGITAL・1月18日NHK東海 NEWS WEB・1月18日CBC・1月18日など)


 「究極の個人情報」とも呼ばれるDNA型データを捜査上の保管することについて、日本には法律はなく、国家公安委員会規則(※)により運用されているのが現状です。このため、日弁連は以前から、法整備の必要性を指摘してきました。
2007年12月21日 日本弁護士連合会『警察庁DNA型データベース・システムに関する意見書


 名古屋地裁判決は、一方で、DNA型等のデータベース化で、科学的捜査が可能となり、捜査の効率性、実効性が高まることを認めました。
 しかし、他方で、無罪が確定した人のDNA型等のデータを継続的に保管する場合、余罪の存在や再犯の恐れなど具体的な必要性が示されるべきだとし、被疑事実が審理の結果、否定され、確定した以上、それ以降の継続的保管の根拠が薄弱になるといわざるを得ない、と述べました。その上で、男性について、余罪や再犯の可能性を認めるのは困難で、データを保管すべき具体的必要性は示されていない、と結論づけました。
 なお、同判決では、男性が違法捜査で精神的苦痛を受けたとして、国と県に損害賠償を求めていた点については、棄却しています。


 法的根拠もなく、ともかくDNA型データを集めまくること自体大問題ですが、少なくとも無罪だったら抹消せよ、という、当たり前のことなのに、これまで認められてこなかった判決を勝ち取った弁護団、立ち上がった原告、そして、判決を書いた裁判官に、心より敬意を表したいと思います。(浜島将周)


(※)DNA型記録取扱規則
 DNA型情報を登録したデータベースの運用方法を定めた国家公安委員会規則で、2005年9月に施行。運用の目的を「犯罪捜査」に限定し、対象者の死亡時か「保管する必要がなくなったとき」には、データを抹消しなければならないと定めている。警察庁の犯罪鑑識官は、情報の漏洩防止のために必要な措置を講じなければならないとしている。



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