「訴状を受け取ってもらえなかったらどうする?①」の続きです。
Ⅱ 「付郵便送達」(民訴法107条):通常送達では送達不能で、勤務先等も分からない場合
通常送達でも就業場所送達でも訴状等を受け取ってもらえない場合、訴訟係属しないことになって、訴訟をあきらめなければならない、となれば、受け取らない者勝ちになってしまします。その救済措置が付郵便送達です。
付郵便送達の場合、実際には書留郵便で訴状等が送付されます。1回目の通常送達で受け取らない人は、2回目以降も受け取らない場合が多いでしょう。しかし、付郵便送達では、発送時に送達があったものとみなされるので(民訴法107条3項)、名宛人が実際に受け取っても受け取らなくても、送達済みとして扱われて、訴訟手続を進めることができます。
※ 住居所調査
付郵便送達されるには、受け取ってもらえないだけで、送達先に実際に名宛人が所在していることを調査して、これを裁判所に書面で報告して、付郵便送達の方法によることを申し出る必要があります。
具体的な調査方法は、表札の有無、郵便受けの状況(郵便物が溜まっているか)、電気・ガスメーターの状況(メーターが動いているか)等の確認のほか、管理人や近隣住人からの聴き取り(名宛人を見かけるか)等を行うこともあります(書式などはこちらをご参照ください。)。
これらの調査の結果、名宛人がそこに所在していると判断できれば、付郵便送達の方法が採用される可能性が高くなります。
Ⅲ 「公示送達」(民訴法110条):所在が不明な場合
以上とは反対に、そもそも名宛人が夜逃げするなどして住民票等記載の場所に所在せず、その他居場所が不明である場合の救済方法が公示送達です。
公示送達の場合、裁判所書記官が訴状等を保管し、名宛人が出頭すれば書類を交付する旨の書面を裁判所に設置されている掲示板に掲示し(民訴法111条)、掲示から2週間経過したときに送達の効力が生じることになります(民訴法112条1項)。
すなわち、公示送達では、名宛人のもとになんらの郵送物も送られず、ただ裁判所前の掲示板に掲示されるだけで、名宛人が送達の事実を知る可能性はとても低いので、最後の手段として用いられます(まれに悪用事例が報告されることがあります。)。
公示送達の方法が採用される際にも、住居所調査が必要になります。付郵便送達の場合とは反対に、送達しようとしていた場所に名宛人が所在していないと判断できなければなりません。
ということで、名宛人が訴状等を受け取ってくれなくても、あるいは、名宛人が所在不明でも、訴訟をすることができます。詳しくは弁護士にご相談ください。(浜島将周)
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